アルゼンチン大統領、改正労働法案を議会に提出
この法案は企業に対して労働時間や休暇の柔軟性を高める権限を与えるとともに、解雇時の退職金制度を見直して企業側の負担を軽減することを目的としている。
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アルゼンチンのミレイ(Javier Milei)大統領が11日、改正労働法案を議会に提出した。政府はこれを通じて官僚主義の解消と雇用の促進を図るとしているが、労働組合側は強く反発している。
ミレイ氏率いる与党・自由前進(LLA)は10月の中間選挙で勢力を拡大。改正案の成立を目指している。
この法案は企業に対して労働時間や休暇の柔軟性を高める権限を与えるとともに、解雇時の退職金制度を見直して企業側の負担を軽減することを目的としている。また、企業が正規雇用を増やすための財政的インセンティブを提供し、給与を外国通貨で支払うことも可能とする規定が盛り込まれている。
しかし、労働組合の強い反発は避けられない状況だ。法案は職場での組合集会を開く際に雇用主の許可を必要とし、職場占拠や出入口の封鎖を「重大な違反」と位置づける条項を含んでいる。この点に対して国内最大の労働団体CGTが強く反対しており、首都ブエノスアイレス中心部で来週、抗議デモを計画している。
労組側はミレイ政権の改革が労働者の権利を著しく弱体化させると主張している。特に一部の提案では、従来の退職金制度の枠組みを変更し、さらなる補償を求める訴訟権を制限する内容が含まれているほか、労働時間のカウント方法や集団交渉の仕組みにも大幅な変更が検討されている。これらは労働者保護の後退として捉えられ、労組の強い警戒感を生んでいる。
一方で、アルゼンチン工業連合(UIA)は法案を支持している。UIAは輸入品の価格競争が国内産業に圧力をかけている現状を踏まえ、正規雇用の拡大が必要だと訴えている。
改正案の提出はミレイ政権が経済成長と雇用創出を重視する姿勢を示すものであり、議会での審議と社会の反応が注目される。労働改革は税制改革や刑法改正と並ぶミレイ政権の改革議題の中核であり、2026年初頭までに法案の成立を目指すとしている。
一方、批評家はこの種の規制緩和が労働者の権利を削ぐ可能性があると警告している。労働者団体からは全国的なストライキ呼びかけや抗議行動の計画もあり、労働改革を巡る対立は今後激化する可能性が高い。法案が成立した場合、アルゼンチンの労働市場の構造と労使関係に大きな変化が生じることになる。
