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アルゼンチン議会が来年度予算案を承認、16兆円規模

予算案の総支出は約1480億アルゼンチン・ペソ(約15.9兆円)、政府はGDP成長率5%、年間インフレ率10.1%と見込んでいる。
アルゼンチンのミレイ大統領(Getty Images)

アルゼンチンの議会上院(定数72)が26日、来年の予算案を可決した。地元メディアによると、採決の結果、予算案は賛成46ー反対25(棄権1)で可決された。

予算案の総支出は約1480億アルゼンチン・ペソ(約15.9兆円)、政府はGDP成長率5%、年間インフレ率10.1%と見込んでいる。また、基礎的財政収支(プライマリー・バランス)でGDP比1.2%の黒字を達成すると予測している。

この可決はミレイ政権にとって長年の懸案であった予算承認プロセスの正常化を意味する。ミレイ政権は就任後2年間、前政権から繰り越された予算で暫定的に政府運営を続けてきたが、社会サービス予算の不足を招き、各方面から批判を受けていた。

新予算について、専門家は前年予算に比べ実質で約7%の増加となったものの、2023年に議会承認された予算と比べると24.6%の減少となっていると指摘。また、政府のインフレ見通しは楽観的であり、実際の物価上昇率はこれを上回る可能性があるとの見方も示されている。

予算案には教育、保健、社会保障などの社会部門への支出増加が盛り込まれているが、これらの追加支出は過去数年間の大幅な予算削減を相殺するには不十分であるとの批判もある。専門家は、これらの社会サービス支出の増加がインフレ調整後において十分な水準に達していないとして、持続可能な財政健全化と社会支援の両立は依然として課題が残ると述べている。

ミレイ政権はこれまで急進的な緊縮財政策を掲げ、予算削減や財政均衡の達成を優先してきた。政権発足から1年を経て、アルゼンチンは10年以上ぶりとなる予算黒字を実現したが、失業率の上昇や公共サービスの低下を招いたとして国内で批判も強い。与野党は大学や小児医療、障害者支援への追加支出をめぐりミレイ(Javier Milei)大統領の拒否権を議会が覆すなど、政権と議会の間で幾度かの対立も生じた。

10月の中間選挙でミレイ氏の与党・自由前進(LLA)は下院と上院で議席を大幅に増やした。この結果、政府は予算案の可決に向けて議会の支持を得る基盤を強化した。ただし、労働法や税制の大規模改革の実現にはなお立法面での調整が必要とされており、今後の政治日程に注目が集まる。

今回の予算可決は市場や国際金融機関に対する「ガバナンスの再建」を示す重要なシグナルと受け止められており、政府はこれを契機に経済安定化と成長戦略の推進を図る考えである。

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