ベネズエラ人家族のクリスマス、アメリカン・ドリームから貧困へ
トランプ米大統領が2025年1月に政権に復帰してから、移民に対する取り締まりが強化され、多くのベネズエラ移民が希望を失い、帰国を選んだと見られている。
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ベネズエラ北部マラカイの今年のクリスマスは、多くの移民家族にとって思い描いていたものとは程遠いものとなった。マリエラ・ゴメスさん(34歳)とその家族はかつて「アメリカンドリーム」を追い求めて米国への移住を目指したが、帰国せざるを得なくなった苦い現実を抱えてこの日を迎えた。彼女は8年前にベネズエラを出てコロンビアやペルーで暮らした後、最終的に米国に向かおうとしたが、入国を目前にしたところで米当局に阻まれ帰国の途についたという。
ゴメスさんとパートナー、それに2人の息子は今年10月にマラカイに戻った。彼らは米国メキシコ国境のテキサス州に到達した際、税関・国境警備局(CBP)に拘束され、排除措置の対象となった。その後メキシコへ送還され、過酷な旅路を経てベネズエラに戻ったという。長旅の間には中央アメリカをバスで横断し、パナマから先はカリブ海を避けて太平洋沿いの不安定な船に乗るなど命がけの移動を強いられた。
帰国後の生活は経済的に厳しく、ゴメスさんは今年のクリスマスの食卓でも伝統的な「ハジャカス」と呼ばれる詰め物入りトウモロコシ生地料理を用意することができなかった。ゴメスさんはAP通信の取材に対し、「豪華ではないが食べ物がテーブルにあるのはありがたい」と語り、家族と質素な食事を囲んだ。彼女は失業中で、仕事を見つける見通しは立っていないという。
トランプ(Donald Trump)米大統領が2025年1月に政権に復帰してから、移民に対する取り締まりが強化され、多くのベネズエラ移民が希望を失い、帰国を選んだと見られている。コロンビアやパナマ、コスタリカなどの統計によると、9月時点で米国の移民政策強化を受けてベネズエラに戻った移民は1万4000人を超えたという。また、長年拒否されていた米国からの強制送還をベネズエラが受け入れるようになったことも帰還者増加の一因となっている。
帰国を余儀なくされたゴメスさんは、このクリスマスに久しぶりに20歳になる娘とも再会した。娘はかつてベネズエラを離れ、別の国で生活していたが、家族と共に過ごすために戻ってきたという。ただし娘は来月ブラジルへ再び移住する予定だ。家族との団欒を喜びつつも、未来への不安が漂う時間となった。
ゴメスさんは新年に向けた願いとして、まずは「命と健康」を祈り、家族が一緒にいられる機会を求めている。また、安定した仕事と生活の再建を望みつつも、現状の厳しさを痛感している。彼女のような帰還移民の存在は、世界的な移民政策の変化とそれがもたらす人々の生活への影響を象徴している。ベネズエラ国内の経済困難と米国の移民政策の影響が重なり、多くの家族が故郷での生活を再構築する険しい道を歩んでいる。
