ベネズエラで民主主義回復の兆し、多くの反体制派が沈黙破る
政府批判の解禁が進む一方で、ロドリゲス氏の与党勢力の中には批判封じを目論む動きもあり、SNSプラットフォームX(旧ツイッター)への完全なアクセス回復も未だ実現していない。
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ベネズエラで民主主義への「一縷(いちる)の望み」ともいえる動きが出ている。長年にわたり政府批判が厳しく抑えられてきた同国で、野党指導者や市民が沈黙を破り、表現の限界に挑戦し始めている。これは、2024年の大統領選後に激化した弾圧と検閲の時代を経ての変化として注目されている。
首都カラカスを拠点とする野党指導者アンドレス・ベラスケス(Andrés Velásquez)氏は、かつてマドゥロ(Nicolas Maduro)前大統領の対抗馬として全国を遊説したが、選挙後の弾圧を避けるため顔をひげで覆い、子どもたちを国外に出すなどして公の場から姿を消していた。だが米国の軍事作戦でマドゥロが失脚した後の1月19日、ベラスケス氏は動画を公開し、マドゥロ政権の解散と新たな選挙の実施を訴えた。さらに数日後にはカラカスの悪名高い治安機関本部・監獄「エリコイデ」前で政治犯の釈放を求める短いビデオを撮影し、国家の抑圧機構の解体を呼びかけた。
ベラスケス氏以外にも、長年にわたり地下に潜伏していた著名な反体制派が公の場に姿を現すようになった。政治犯の家族が刑務所前で抗議活動を行い、仮釈放された活動家が通常は再発言を禁じられるはずの保釈条件を無視して声を上げるなど、各地で「自己検閲」の解除が進んでいる。メディアも変化の兆しを見せ、かつて政府批判の放送を自制していた私営テレビ局が、政権批判の声を再び取り上げ始めている。
この政治的な自由の拡大は、野党側ではソ連崩壊前の「グラスノスチ(情報公開)」になぞらえられている。だがこれは、トランプ米政権が財政的インセンティブやさらなる軍事的圧力を用いて「米国がベネズエラを運営する」との公約を実行している極めて特殊な状況下で進展しているものだ。ホワイトハウスはロドリゲス(Delcy Eloína Rodríguez Gómez)暫定大統領の協力姿勢を高く評価し、油田開発や犯罪対策、米国の敵国とされるイランやロシアの影響力排除に向けた取り組みを称賛している。一方で、選挙の実施や民主主義の回復に関する要求が無期限に先延ばしされる懸念も根強い。
ロドリゲス氏は先週、政治目的で拘束された野党指導者、ジャーナリスト、人権活動家ら数百人の釈放につながる可能性のある恩赦計画を発表した。また「エリコイデ」の閉鎖と、警察や周辺住民のためのスポーツ・文化施設への転換を表明し、「暴力と過激主義に彩られた政治的対立の傷を癒す法にしてほしい」と訴えた。
しかし国際的な人権監視団体である米州人権委員会は、ロドリゲス暫定政権が提供するわずかな自由の「パンくず」は独立した司法や治安機関の存在には代わらないとの見解を示す。「ベネズエラの市民的空間は依然として砂漠だ。現れる批判的声は、自由が存在するからではなく、抑圧がゆるんでいるからこそ土壌に根を張る種のようなものだ」と述べ、これが民主的転換点を意味するものではないと警告した。
2024年7月の大統領選後、マドゥロ政権は敗北を認めず、数千人の恣意的な拘束を伴う弾圧を強めた。このため多くの反対派活動家は潜伏を余儀なくされ、残された独立系メディアも政府の検閲を恐れて報道を縮小していた。こうした長年の検閲と抑圧の結果、国民の間には恐怖心が深く染み付いていた。ベラスケス氏はAP通信のインタビューで、公然と政治活動の限界を押し広げる意向を示す一方、国家の抑圧機構が依然としてロドリゲス氏とその支持者の支配下にあるとして警戒を強めていると語った。「我々は失われた領域を取り戻し続けなければならない。機会が開かれた今、それを閉ざさせてはならない」と述べた。
政府批判の解禁が進む一方で、ロドリゲス氏の与党勢力の中には批判封じを目論む動きもあり、SNSプラットフォームX(旧ツイッター)への完全なアクセス回復も未だ実現していない。これに対し一部の内相や政府高官はメディアの露出を批判し、反体制派を混乱を煽る存在として非難している。こうした複雑な状況の中で、ベネズエラの民主主義と表現の自由の未来は依然として不透明だ。
