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アルゼンチン軍事クーデターから50年、行方不明者の捜索続く


1976年3月24日のクーデターで成立した軍事独裁政権は反体制派の排除を目的に大規模な弾圧を行い、多くの市民を秘密裏に拘束した。
2026年3月23日/アルゼンチン、1976年の軍事クーデターの犠牲者遺族(AP通信)

アルゼンチンで1976年の軍事クーデターから50年を迎える中、独裁政権下で「行方不明」とされた人々をめぐり、遺族による捜索と埋葬の取り組みが今なお続いている。長い年月を経ても癒えない傷と、真相解明の遅れが改めて浮き彫りになっている。

3月23日、北部トゥクマン州の墓地で、かつて軍に拘束され行方不明となっていた若い夫婦の遺骨が埋葬された。ジャーナリストの男性と心理学者の妻はクーデター直後に軍によって連行され、その後の消息は長年不明となっていた。遺族は棺に口づけしながら埋葬に立ち会い、「ようやく居場所が分かった」と語った。この埋葬は半世紀に及ぶ喪失の一つの区切りとなった。

1976年3月24日のクーデターで成立した軍事独裁政権は反体制派の排除を目的に大規模な弾圧を行い、多くの市民を秘密裏に拘束した。人権団体によると、約3万人が拉致・拷問、そのまま殺害されるなどして「失踪」したとされる。公式記録では約8000人が死亡したとされるが、実数はそれを大きく上回るとみられている。

拘束された人々は秘密収容所に送られ、拷問や非人道的扱いを受けた末に殺害されるケースが多かった。遺体は身元不明のまま埋葬されたり、海に投棄されたりするなど、証拠隠滅が徹底されていた。このため、多くの遺族は長年にわたり家族の行方を知ることができず、「消された人々(デサパレシードス)」と呼ばれてきた。

民主化後の1983年以降、軍関係者の裁判や調査が進められてきたが、遺骨の発見と身元確認は主に遺族や民間の法医学チームに委ねられてきた。今回埋葬された夫婦の遺骨も、旧鉄道用井戸を転用した集団埋葬地で発見されたもので、長年の発掘と鑑定の成果である。同地からはこれまでに100体以上の遺骨が見つかっている。

しかし、真相解明の取り組みは困難を極めている。軍関係者の多くが沈黙を守り、資料も十分に公開されていないためである。さらに近年は、人権関連機関の予算削減が進み、調査活動に影響が出ていると指摘されている。専門家は「50年経っても『彼らはどこにいるのか』という問いは依然として重要だ」と強調する。

また、当時拘束された妊婦から生まれた子どもが軍関係者に引き取られるなど、家族の分断という問題も残されている。こうした子どもたちの身元特定作業も続けられており、完全な解決には至っていない。

今回の埋葬は長年の悲しみに一区切りをもたらす象徴的な出来事である一方で、多くの行方不明者がいまだ見つかっていない現実も示している。独裁の記憶を風化させず、責任を問い続けることの重要性が改めて問われている。

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