トランプ氏の「大麻」大統領令が医療研究に与える影響
今回の大統領令はマリファナを合法化するものではないが、連邦法の下での研究環境を改善すると期待されている。
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トランプ(Donald Trump)米大統領は今月中旬、マリファナ(大麻)に関する大統領令に署名し、連邦政府が大麻をこれまでの最も危険とされる薬物「スケジュール1」から、医療利用があると認められる「スケジュール3」薬物へ再分類する方針を打ち出した。同令は大麻の連邦法上の位置づけを変更し、現行の規制を緩和するものであり、医療研究の拡大に大きな影響を与える可能性があると専門家は分析している。
スケジュール1は「医療上の利用が認められず、依存性や乱用の危険性が高い」とされる薬物を指し、ヘロインやLSDなどが含まれている。対してスケジュール3は医療的利用があり乱用・依存リスクが中程度以下と評価される薬物であり、ケタミンや一部のステロイド剤などが該当する。今回の再分類措置はこの評価の変更を政府が認めたことを意味している。
今回の大統領令はマリファナを合法化するものではないが、連邦法の下での研究環境を改善すると期待されている。従来、スケジュール1薬物は研究者にとって大きな障壁となっており、麻薬取締局(DEA)のライセンス取得の困難さや、年間供給量の制限などにより、大学や研究機関が手を出しにくい状況にあった。メリーランド大学はスケジュール1から3への変更により、研究者がこれまで避けていた研究に取り組みやすくなると述べ、科学的知見の蓄積が進む可能性を指摘している。
一方でこの動きに対しては慎重な意見もある。ある専門家は大麻の再分類は研究を促進する一方で、乱用リスクを軽視する誤解を招く懸念があると述べた。疾病対策センター(CDC)によると、大麻を使用する人の約30%が「大麻使用障害」を発症する可能性があり、日常生活に支障をきたすケースもあるとされる。しかし、専門家は大麻に含まれるカンナビジオール(CBD)など一部の成分がてんかん治療などに利用されている例もあり、研究が進むこと自体には支持を示している。
大統領令は医療研究の制約を緩和するだけでなく、大麻関連産業にも影響を与える可能性がある。連邦法上の厳しい規制が和らぐことで、研究資金や投資環境の改善、企業の税負担軽減につながるとの見方も出ているが、企業が大手銀行から資金調達を行う際の不安など依然として課題も残ると指摘されている。
一部ではトランプ氏の今回の措置が政治的な意図を含むとの指摘もあり、完全な合法化や包括的な政策改革を求める声も依然として強い。現行の大統領令は研究の可能性を広げる重要な一歩とみられているが、最終的な大麻の位置づけや規制体系の抜本的な見直しには、今後の立法措置や規制当局の判断が必要とされる。
今回の大統領令は長年にわたって論争となってきた米国のマリファナ政策の転換点となる可能性がある。医療研究と規制のあり方を巡る議論は今後も続く見込みであり、科学的根拠に基づく政策形成が求められている。
