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2025年末の金・銀価格乱高下、要因は何か、驚異的な上昇率

今年1年を通じて、金価格は約66%上昇、銀は約160%という驚異的な上昇率を示した。
金と銀の延べ棒(ABCニュース)

2025年末、金(ゴールド)と銀(シルバー)の価格は激しい乱高下を見せ、市場参加者の関心を集めている。特に銀の価格は過去5年で最大の一日下落を記録したが、その後には急反発する場面もみられた。金についても類似した変動が観測され、ジェットコースターのような値動きとなっている。

今年1年を通じて、金価格は約66%上昇、銀は約160%という驚異的な上昇率を示した。これは標準的な株式市場の伸び率(S&P500が約17%上昇)を大きく上回るパフォーマンスであり、貴金属市場が依然として注目されていることを示している。

こうした激しい値動きの背景には複数の要因がある。まず、投資家がこれまでの値上がり益を確保するために利益確定売りを進めたことが短期的な価格下落を招いた。特に急騰後の修正局面では、ポジション調整が価格変動を増幅させる傾向がある。

さらに、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が先物取引のマージン(証拠金)要件の引き上げを実施したことによって、レバレッジ取引のコストが上昇し、金・銀のポジションを縮小する動きが強まった。これにより市場からの資金流出圧力が高まり、価格の急落につながった可能性が指摘されている。

また、中長期的な需要の背景としては、世界的な経済・地政学的な不確実性が依然として高い水準にあることがある。投資家はリスク回避の手段として貴金属に資金を振り向ける傾向があり、これが価格を押し上げる要因のひとつとなっている。過去の研究でも、株式市場が混乱する局面で金価格が上昇する傾向が確認されている。

さらに、ドルの価値が低下傾向にあることや、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを進めるとの見方が強まったことも、金と銀を保有するインセンティブを高めた。通常、金利が低下すると利子を生まない資産である貴金属の魅力が相対的に高まるため、投資資金の流入が続いたとみられる。

一方で、こうした価格上昇が持続的なトレンドとなるのかについては専門家の見方が分かれている。急激な値上がりとそれに続く急落は、市場のボラティリティ(価格変動の激しさ)が高まっていることを意味しており、成熟した強気市場の終盤を示唆するとの見方もある。このため、投資家は慎重なポジション管理が必要だという意見も存在する。

今後、2026年に向けての貴金属市場は、金利動向や地政学的リスクの変動、株式市場の動きなど複数のマクロ要因に左右されると予想される。特にFRBの金融政策判断や世界経済の不確実性が市場心理に影響を与えるため、価格の大きな変動が続く可能性があるとの観測もある。

総じて、2025年末時点の金と銀の価格は、強い上昇トレンドと同時に潜在的なリスクが混在する状況にあり、投資家は価格変動リスクを十分に理解した上で市場に参加する必要がある。金・銀の今後の動向からは、世界経済の複雑な構造と投資マインドの変化が読み取れる。

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