米国西部で雪不足続く、スキー場に深刻な影響
ロッキー山脈などの西部山岳地帯では例年に比べ積雪量が著しく少なく、スキー場がコースを十分に開設できないほか、氷の宮殿として知られるイベントの中止や観光関連事業にも打撃が出ている。
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米国西部のスキーリゾートでは、この冬の暖冬と降雪不足により深刻な影響が出ている。ロッキー山脈などの西部山岳地帯では例年に比べ積雪量が著しく少なく、スキー場がコースを十分に開設できないほか、氷の宮殿として知られるイベントの中止や観光関連事業にも打撃が出ている。観光客向けに馬車で雪景色を楽しんでもらおうとする施設もあるが、雪が少なく本来の「そり」体験ができない状況が続いている。
西部の山岳地帯では雪が冬の観光やスキー業だけでなく、何百万エーカーもの農地や都市部の水需要にとって極めて重要な役割を果たしている。しかし、今季は雪ではなく雨が多く、積雪が例年より大幅に少なく「スノーパック(雪の貯水層)」の形成が遅れている。レイクタホ(カリフォルニア・ネバダ州境)周辺のスキー場でもリフトの稼働率は低く、積雪深は平年を大きく下回っている。気象台はユタ州の2034年冬季オリンピック開催予定地域周辺でも最近の気温が平年より3〜5度高いと報告している。
ユタ州東部では氷のアトラクションを凍らせるのに必要な低温が得られず、「ミッドウェイ・アイス・キャッスル」の今季開催が無期限延期となった。また、コロラド州ビール近郊のスキー場ではそり用の雪がないため馬車での乗馬体験に切り替えて対応している。施設関係者は「乗り物そのものや馬の雰囲気は変わらない」と述べるが、本来の冬の体験とは異なる対応を余儀なくされている。
さらに北西部では猛烈な雨が道路や橋を流失させ、住宅が浸水する被害も発生している。一部の地域ではようやく山岳地帯にまとまった雪が降ったものの、修復に数か月かかる可能性のある被害を受けた道路がスキー場へのアクセスを遮断している。一方で、オレゴン州のデシューツ川上流域では1981年以降最も遅い積雪開始となるなど、記録的な遅れが観測されている。オレゴン、アイダホ、コロラド州では11月の気温がいずれも記録的な高さとなり、平年より6〜8.5度高かったというデータもある。
こうした暖冬・少雪の傾向は西部全域にわたる干ばつや山火事のリスクを再び高める可能性がある。たとえ積雪量が多い地域でも雨として降るため、雪として蓄えられることがなく、農業や都市の水供給にとって重要な雪解け水を確保できないとの指摘がある。海洋大気局(NOAA)の干ばつ情報調整官は「雪の層は西部の水供給にとって最大の貯水池の一つだ」と述べ、雪不足の問題がスキー業だけでなく広範な影響を与えていると警鐘を鳴らす。
気候科学者の多くは、地球温暖化の進行を抑制することがこの「雪から雨への転換」傾向を緩和する鍵だと指摘している。対照的に中西部や北東部では低温により記録的な大雪となり、ニューヨーク州・バーモント州などのスキー場では例年以上のコース開設や積雪量が観測されるなど地域差の激しい冬の様相を呈している。専門家は西部でも今後大規模な積雪が一度に訪れる可能性は否定できないとしつつも、現状は温暖化が冬季レジャー産業に与える影響を示すものとして注目されている。
