◎粉ミルク大手アボット・ニュートリションのリコールは粉ミルク不足に拍車をかけた。
米国の粉ミルクが加速している。
バイデン(Joe Biden)大統領は12日に粉ミルクメーカーや小売業者と話す予定である。
全米の粉ミルクはサプライチェーンの混乱、リコール、粉ミルク大手アボット・ニュートリションの施設閉鎖などの影響で供給不足に拍車がかかった。
小売業者はひとりあたりの販売量を制限している。医師や医療従事者は粉ミルクを水で薄めたり、SNSで拡散しているDIYレシピを真似ないよう警告し、粉ミルクが手に入らない場合は政府機関や病院に相談するよう呼びかけている。
アボット社のリコールと施設の閉鎖は低中所得層の家計を圧迫している。このリコールでWIC(女性、乳幼児、子供のための特別補助栄養プログラム)の対象となる多くの銘柄が一掃された。
WICは連邦政府の支援プログラムのひとつで、アボット社のリコール後、対象銘柄を増やした。
コネティカット州のカージー氏はAP通信の取材に対し、「生後7カ月の息子の粉ミルク缶があと1つになったとフェイスブックに投稿したら、フォロワーがサンプル詰を数缶送ってくれた」と語った。「私と息子はパニック状態です。神様、どうかミルク缶をお与えください...」
カージー氏は「粉ミルク不足に悩む母親の会」を結成し、在庫がありそうな店舗や情報を共有している。
メリーランド州のアンダーソン氏もSNSを活用しているとツイッターに投稿している。「ユタ州とボストンのフォロワーが粉ミルクを見つけたと教えてくれたので、代わりに購入してもらい、代金と送料を支払いました...」
コネチカット州の女性はAP通信に、「3カ月半ばの娘に必要な低アレルギー性の粉ミルクを探している」と語った。「アマゾン、ウォルマート、無数の商店、どこにもありません。バイデン大統領は何をしているんですか?」
バイデン大統領は粉ミルク問題に対処すると約束しているが、リコールや施設の閉鎖に伴う供給減を解消するには早くても数週間はかかると見込まれている。
ある女性はSNSに「母乳で育てればよい、という投稿を見るたびに腹が立つ」と投稿している。出産しても母乳が出ない女性はたくさんいる。
ホワイトハウスのムニョス(Kevin Munoz)報道担当は12日、「粉ミルク不足に対処する追加措置を発表する」とツイートした。
米国の物資不足は2021年初め頃から本格化し、急速に悪化した。医薬品、コンピューターチップ、家電、食料、燃料などは工場の閉鎖やコロナ回復期の需要激増に対応できず、米国だけでなく世界中で不足している。
アボット社のリコールは粉ミルク不足に拍車をかけた。
FDA(食品医薬品局)は2月、アボット社が運営するミシガン州工場の粉ミルク製品の一部を避けるよう消費者に警告し、自主回収を開始した。3月に公表された連邦検査官の調査報告書によると、アボット社は工場の衛生状態や必要手順を維持していなかったという。
アボット社は声明の中で、「ミシガン州工場で製造された粉ミルクを飲んだ乳児から環境菌が検出されたという申し出を4件受けた」と明らかにした。同社の粉ミルクを飲んだ乳児2人が病気を発症し、死亡している。
アボット社は、「すべての利用可能なデータを検証した結果、死亡した乳児の病気と粉ミルクの因果関係はみられない」と報告した。
またアボット社は、FDAの承認を得られれば、2週間以内に工場を再開できるとしている。
報道によると、アボット社はまずエレケア、アリメンタム、低アレルギー粉ミルクの生産を再開し、その後シミラックや他の粉ミルクの生産に移行する予定とのこと。ただし、生産開始から店頭に並ぶまでは6~8週間かかるという。
FDAは10日、国内メーカーと協力して粉ミルクの生産量を増やし、輸入品の事務処理を簡素化すると発表した。FDAによると、サプライチェーンやリコールの問題で粉ミルクが不足するという噂が流れた結果、4月の粉ミルク販売量はリコール前の月に比べて大幅に増加したという。