米財務省、メキシコの麻薬組織「ロス・マヨス」に制裁
ロス・マヨス(Los Mayos)はメキシコの麻薬カルテルの一つで、特にメキシコ北部や米国との国境地帯で活動している。
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米財務省は18日、メキシコ・シナロア州に本拠を置く世界最大の麻薬組織シナロア・カルテルの派閥のひとつである「ロス・マヨス」に制裁を科した。
トランプ政権は2月、シナロア・カルテルやハリスコ新世代など、中南米の8つの麻薬組織を外国テロ組織に指定。6月にはシナロア・カルテルの一派であるロス・チャピトスもこの指定に加えた。
財務省のハーレー(John Hurley)次官はこの日、首都メキシコシティを訪問し、政府高官や経済界のリーダーと会談。麻薬密輸、カルテルの活動、違法資金調達への対策について協議した。
財務省は声明で、「メキシコを拠点とする麻薬カルテルが米国の金融システムにアクセスすることを許さない」と強調した。
同省はロス・マヨスの全構成員および関係があるとされる5人と15社に制裁を科した。
制裁リストに追加された個人・企業が米国内で保有する資産は全て凍結され、米国民は対象者との取り引きを禁じられる。
トランプ政権は発足以来、カルテルに関連する個人、企業、銀行に制裁を科してきた。
ロス・マヨス(Los Mayos)はメキシコの麻薬カルテルの一つで、特にメキシコ北部や米国との国境地帯で活動している。組織名はシナロア州にある「マヨ」地方から取られたもので、その地域での影響力が強いことを示している。ロス・マヨスは、シナロア・カルテルと密接な関係を持つとされるが、独自に活動する部分も多く、メキシコ国内外で麻薬の密売、洗浄活動、人身売買、強盗などを行っている。
組織の成り立ちと背景
ロス・マヨスは1990年代後半から2000年代初頭にかけて、シナロア・カルテルから分派したとされる。シナロア州のマヨ地域を拠点にしていたが、他の州にも広がり、特にノガレス(米アリゾナ州と接する地域)などの国境地帯で力を持っている。組織のリーダーはその活動が広範囲に及ぶため、長年にわたって確かな情報が出てこなかったが、シナロア・カルテルのリーダー、ホアキン・グスマン(エル・チャポ、米国で収監中)の支配下で活動していたとされる。
ロス・マヨスは、シナロア・カルテルの中でも特に密輸、麻薬の製造と供給に力を入れており、コカイン、メタンフェタミン、大麻、ヘロインなどの麻薬を製造・密輸している。特に米国への密輸が主な収入源となっており、ロス・マヨスの活動範囲はメキシコの北部、米国との国境地帯、さらには米国内へと及んでいる。
活動内容と手口
ロス・マヨスは、麻薬密売を中心とした犯罪組織であるが、その手口は非常に巧妙で暴力的だ。特に米国とメキシコとの国境を利用した密輸が得意で、トンネルを掘って麻薬を隠して密輸する技術や、密輸用の貨物コンテナを利用する手法が知られている。また、ロス・マヨスは密輸だけでなく、麻薬の栽培や製造にも深く関与しており、シナロア州などの山岳地帯に大規模な麻薬の生産施設を持っている。
組織はまた、麻薬の売買だけでなく、洗浄活動にも関与しており、麻薬で得た不正な資金を合法的な事業に変える手段を持っている。これには、不動産業、商業施設、さらには合法的な貿易を利用した資金洗浄が含まれ、こうした手段を通じて麻薬取引の資金を隠しながら、影響力を広げている。
組織の暴力と影響
ロス・マヨスは組織内の対立や競争のために非常に暴力的な手段を取ることで知られている。特にライバルの麻薬組織との争いが激しく、シナロア・カルテルや他のカルテルとの抗争に巻き込まれることが多い。例えば、ロス・マヨスはティファナカルテルや新興のカルテルと対立し、暴力的な衝突を繰り広げてきた。
暴力の手段としては、銃撃戦、誘拐、拷問、殺害などがあり、これらの行為は一般市民や警察官にも向けられることが多い。ロス・マヨスのメンバーは警察官や司法関係者を標的にすることもあり、そのために麻薬取引を取り締まろうとする動きが抑えられることが多い。麻薬組織の暴力はメキシコ国内での治安悪化の一因となり、一般市民にも多大な影響を与えている。
法執行機関との対立
ロス・マヨスはメキシコの法執行機関や軍との対立を繰り広げてきた。政府は麻薬カルテルの壊滅を目指し、警察や軍を動員しているが、ロス・マヨスはこの圧力にも関わらず勢力を維持している。軍や警察に対する汚職が組織内部に蔓延し、一部の警察官がロス・マヨスと手を結んでいるケースも報告されている。これにより、麻薬組織の活動はさらに厳しい環境の中で続いている。
現在の状況と展望
近年、ロス・マヨスの指導者や幹部の一部が逮捕されたり、殺害されたりしており、組織内の権力構造は不安定になっている。しかし、組織の拠点が広がっており、新たなリーダーが登場している可能性もあり、今後の展開が注目される。麻薬戦争が続く中で、ロス・マヨスはシナロア・カルテルと並ぶ重要な麻薬カルテルとして存在し続けると考えられている。
ロス・マヨスの活動を抑えるためにはメキシコ政府だけでなく、米国を含む国際的な協力が必要とされており、密輸や犯罪の取り締まりを強化することが重要だ。