米国とメキシコ、銃器密輸を阻止へ、麻薬カルテル対策の一環
米国からメキシコへの銃の持ち込みは、近年のメキシコ国内における麻薬戦争や組織犯罪の激化と密接に関係しており、両国間の治安政策において重要な課題となっている。
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米国務省は27日、メキシコ国境を越えた銃器の流入を阻止することを目的とする新たな二国間イニシアチブを開始したと発表した。
新イニシアチブの一環として、メキシコは弾道画像技術などの米国製追跡ツールの使用を全32州に拡大する。
国務省は声明で、「両国は共同捜査、逮捕、起訴、情報共有を強化する」と述べた。
本イニシアチブではさらに、メキシコにおけるカルテル暴力の主要な要因である銃器の密輸を阻止するため、二国間調査の深化、取り締まり強化、米国による検査強化も求められている。
在メキシコ・米国大使館はX(旧ツイッター)に声明を投稿。「米国とメキシコが初めて共同検査、リアルタイム情報共有、拡大捜査を実施し、カルテルの銃密輸を阻止する。両国を守る歴史的協力だ」と書いた。
メキシコと米国の間には、銃の違法流入という深刻な問題が存在している。特に米国からメキシコへの銃の持ち込みは、近年のメキシコ国内における麻薬戦争や組織犯罪の激化と密接に関係しており、両国間の治安政策において重要な課題となっている。
米国では銃の購入や所持に関する規制が州ごとに異なり、一部の州では比較的容易に銃を購入することができる。そのため、合法的に購入された銃が、第三者の手を経てメキシコへ不正に持ち込まれるケースが後を絶たない。これらの銃は麻薬カルテルや犯罪組織の手に渡り、警察や軍隊と対峙する際に使用されることが多い。
特にアサルトライフルや半自動小銃といった高性能な武器が大量に流入しており、これが暴力の激化を招いている。メキシコ国内では、合法的に銃を所持するための条件が非常に厳しく、一般市民が簡単に銃を入手することはできない。しかし、米国からの違法銃流入によって、組織犯罪は武装を強化し、治安機関よりも強力な火力を持つケースさえ見られる。
メキシコ政府はこうした状況に強い危機感を抱いており、米国に対して銃規制の強化や国際的な協力を要請している。2021年には、メキシコ政府が米国の複数の銃器メーカーを相手取り、銃の流入が国内の暴力と犯罪に直接的な影響を与えているとして訴訟を起こした。この訴訟は国際的にも注目を集め、銃の供給責任について議論を巻き起こした。
一方、米国側では「銃所持の自由」が憲法修正第2条で保障されており、国内の銃規制強化には政治的な抵抗も根強い。そのため、銃の販売や流通に対する抜本的な対策が難航しており、メキシコへの違法輸出を完全に防ぐには至っていない。銃の密輸は同時に麻薬や人身売買など他の違法取引とも絡んでおり、包括的な国境対策が必要とされている。