米司法省、ハイチのギャングリーダーを起訴、抗争激化で首都陥落寸前

シェリジエは一般市民を含む100人以上を組織的に虐殺した罪などに問われている。
ハイチ、首都ポルトープランス、武装ギャング「G9&Family」のリーダー(Matias Delacroix/AP通信)

米司法省は12日、中米ハイチで最も強力なギャングのリーダーと、そのギャングに資金を提供したとされる米国市民を起訴したと明らかにした。

米国務省はハイチの首都ポルトープランスの大部分を支配するギャング連合「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansam)」のリーダーである元警察官の通称「バーベキュー」ことシェリジエ(Jimmy "Barbecue" Cherizier)の逮捕につながる情報に500万ドルの報奨金をかけている。

米司法省はシェリジエとノースカロライナ州在住のハイチ人であるリチャードソン(Bazile Richardson)を起訴したと明らかにした。

リチャードソンが逮捕された経緯は明らかになっていない。

米政府は5月、ヴィヴ・アンサムと中部アルティボニット県に拠点を置く「グラン・グリフ」を外国テロ組織と国際テロリストに指定した。

シェリジエは一般市民を含む100人以上を組織的に虐殺した罪などに問われている。

ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。

ポルトープランスでは3年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。大統領のポストは今も空席のままだ。

ポルトープランスの90%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。

ポルトープランスと周辺地域の暴力は昨年10月頃から激化。アルティボニット県ではグラン・グリフとみられる武装ギャングが複数の地区を襲撃し、市民少なくとも115人を虐殺した。逮捕者は出ていない。

最新のギャング間抗争は3月初めに勃発。ヴィヴ・アンサムと対立する複数のギャングが民間人を巻き込みながら激しい縄張り争いを繰り広げている。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は24年10月~25年6月までの間に、ギャング暴力により全国で少なくとも4864人が死亡、130万人もの市民が避難を余儀なくされていると報告している。

ハイチ暫定大統領評議会のサン・シル(Laurent Saint-Cyr)議長は先週、同国の治安を改善し、ギャングとの戦いに勝利すると誓った。

しかし、ヴィヴ・アンサムとその関連組織は支配地域を拡大し続けており、警察官がギャングに寝返ったという情報もなる。

一部の専門家は年内にもポルトープランス全域がヴィヴ・アンサムの支配下に置かれる可能性があると警告している。

国連は先週公表した報告書の中で、ハイチ国連支援ミッション(MSS)が当初予定していた要員2500人のうち991人が現地で活動し、必要な年間予算8億ドルのわずか14%、約1億1200万ドルしか集まっていないと明らかにした。

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