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米国務省、パキスタンへの洪水支援を承認=報道

トランプ政権が自然災害関連の対外支援を承認したのは初めてである。
2025年9月4日/パキスタン、東部パンジャブ州、冠水した道路(AP通信)

米国務省が大規模な洪水に見舞われたパキスタンへの支援を承認した。現地メディアが9日に報じた。

トランプ政権が自然災害関連の対外支援を承認したのは初めてである。

ABCニュースはプレスリリースを引用し、「「米国は広範囲にわたる壊滅的な洪水によって生活を根こそぎにされたパキスタン国民と連帯する。9月5日、米国務省は被災地域に対し食料・避難所・その他救命災害支援物資を届けるための資金援助を承認した」と報じた。

国務省報道官はABCの取材に対し、「我々はパキスタン政府及び現地の信頼できる救援団体と連携し、最も被害の大きい地域へ支援を届ける態勢を整えている」と述べ、資金規模は明らかにしなかった。

米中央軍(CENTCOM)司令部も声明で、「洪水直後にパキスタンへの緊急支援物資の初回輸送を実施した」と報告している。

トランプ政権はこれまで、対外支援の大幅削減で批判を浴びてきた。これには外国での自然災害に対する米国の対応を調整する役割を担う国際開発庁(USAID)の閉鎖も含まれる。

パキスタン東部パンジャブ州では8月28日、豪雨と隣国インドのダム放流により3つの主要河川がほぼ同時に氾濫。4000を超える集落が被害を受けた。

パキスタンでは6月26日以来、大雨に関連する災害で約900人が死亡。パンジャブ州だけで200人以上の死亡が確認されている。

インドが管理する北部の係争地カシミール地方でも洪水や土砂崩れにより数百人が死亡している。

トランプ政権とインド政府の関係はロシアをめぐり急速に悪化。これはパキスタンにとって地政学的な機会とリスクの双方をもたらしている。

冷戦期から米国はパキスタンを対ソ連戦略の一環として重視してきたが、2000年代以降は中国の台頭に対抗するためにインドとの戦略的連携を優先した。

そのためパキスタンは相対的に外交的な後景に追いやられ、軍事援助や経済支援の減少にも直面してきた。しかし、米印関係がさらに悪化した場合、米国は地域安定のためにパキスタンとの関係再構築を模索する可能性がある。

特にアフガニスタン情勢やテロ対策でパキスタンの協力は依然として不可欠であり、米国の視線が再びイスラマバードに向かう余地は存在する。

一方で、米印関係の悪化は単純にパキスタンに利益をもたらすとは限らない。インドが米国から距離を取る場合、中国やロシアに接近する可能性が高く、これがパキスタンにとって新たな圧力となる。

特に中国とパキスタンは「全天候型パートナーシップ」と称される緊密な関係を維持しているが、インドが中国に歩み寄れば、南アジア全体の力学が大きく変化する。

また、米中対立の文脈でパキスタンはしばしば「どちらに与するのか」を問われ、選択を迫られる状況に置かれる。経済的に中国依存を強める一方で、国際金融機関や西側支援なしには財政を維持できないパキスタンにとって、両陣営の板挟みは深刻なリスクとなる。

米印関係の悪化は短期的にはパキスタンに外交的発言力を回復させる可能性を持つが、中長期的には米中対立の激化やインドの戦略的方向転換に伴う不確実性を高める。パキスタンが真の利益を得るには、単なる米印関係の変動に依存せず、自国の経済基盤と地域安定への貢献を強めることが不可欠である。

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