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米沿岸警備隊、ベネズエラ沖で制裁対象船舶を拿捕

トランプ政権は経済制裁の一環として、ベネズエラ関連の海上取引を封じ込める取り組みを強化している。
ベネズエラ沖を航行するタンカー(Getty Images)

12月20日、米国沿岸警備隊がカリブ海の国際水域、ベネズエラ沖付近で制裁対象となっているタンカーを拿捕した。複数のメディアが当局者の話しとして報じた。

ABCニュースによると、政府は押収作戦の実施を認めたものの、船名や正確な位置、積載貨物の詳細については現時点で公表していない。トランプ政権は経済制裁の一環として、ベネズエラ関連の海上取引を封じ込める取り組みを強化している。

報道によると、このタンカーは財務省の制裁対象で、沿岸警備隊が主導して作戦を展開しているという。海軍のヘリコプター部隊が支援に加わっている可能性が報じられているが、詳細は不明だ。

この作戦は12月10日に同じく制裁対象となっていた石油タンカーが同海域で米側に押収されたのに続く二例目の措置となる。このタンカーはベネズエラに関連する不正な原油取引に関与しているとして制裁対象となり、沿岸警備隊と海軍が制圧したとされる。

この拿捕はトランプ政権がベネズエラに対して圧力をかけている政策と軌を一にしている。トランプ(Donald Trump)大統領は先週、自身が打ち出した「制裁対象船舶に対する完全かつ全面的な封鎖」を発表。これに基づき制裁対象となったタンカーの出入りを阻止する方針を示した。封鎖宣言はベネズエラの原油輸出収入を断つ狙いがあるとされるが、国際的には批判も強まっている。

ベネズエラ側や関係国はこれらの米国の行動に強く反発している。イランは押収を「海洋法および航行の自由の重大な侵害」と非難し、「カリブ海における海賊行為」と表現した。また、ベネズエラ政府も主権侵害だと主張し、米国の行動を批判している。

今回拿捕されたとみられる船舶に関してはまだ公式情報が公表されておらず、その所有者や貨物内容も未確認のままだ。米政府は押収措置を「制裁執行と海上安全保障の一環」と説明しているが、実質的にはベネズエラ経済への圧力強化が背景にあるとの分析が専門家から出ている。

米国はすでにこの地域に多数の軍艦を展開しており、制裁逃れを図るいわゆる「影の船団(shadow fleet)」への対応を進めているとされる。

国際社会の反応は二分しており、米国の同盟国は制裁強化を支持する一方で、懸念を表明する国も少なくない。米国の圧力はベネズエラ政府を弱体化させる意図があるとの指摘もあり、今後の展開次第では地域の緊張がさらに高まる可能性がある。

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