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米国のコーヒー価格下がらず、トランプ関税見直しも高値続く

トランプ政権は今夏、ブラジルなど主要なコーヒー生産国からの輸入に最高41%の相互関税を課すなど広範な輸入関税を導入した。
アメリカンコーヒー(Getty Images)

米国のコーヒー愛好者はトランプ(Donald Trump)大統領が先月実施した輸入関税の一部撤回によって、コーヒー価格が下落するとの期待を持っていた。しかし、実際には価格の改善が消費者に広く行き渡るまでには時間がかかる見込みである。

トランプ政権は今夏、ブラジルなど主要なコーヒー生産国からの輸入に最高41%の相互関税を課すなど広範な輸入関税を導入した。しかし、こうした関税がコーヒー価格に影響を与える前に、昨年発生した原料豆の供給不足によって価格がすでに急騰していたことが価格高騰の主因となっている。昨年から原料豆の価格は大幅に上昇し、今年3月までの12か月間でほぼ倍増した。

アナリストは、「これまで見られた小売価格の上昇の多くは関税の影響ではなく、記録的に高い原料豆市場に起因している」と指摘する。原料豆の価格が消費者に反映されるまでには、焙煎や価格交渉などのサプライチェーンの遅れもあり、通常少なくとも9か月程度かかる。このため本格的な価格低下は来年以降になる可能性が高いという。

米国は世界最大のコーヒー消費国であり、高止まりしている価格は消費者の負担となっている。ホワイトハウスにとっては、2026年11月の中間選挙を控え、食品価格の上昇を抑えることが政治的な課題となっている。トランプ氏はニュージャージー州やニューヨーク州、バージニア州での最近の選挙で食料価格への不満が民主党勝利の一因になったとして、関税措置の見直しに踏み切った。

トランプ政権は米国で容易に生産できないコーヒー豆など200以上の食品項目に対する相互関税を撤回し、ブラジルからの輸入に対して追加で課されていた40%の関税も免除した。ブラジルは米国のコーヒー豆輸入の約3分の1を担っている。

ただし、原料豆価格は依然として高く、関税撤回後の降下幅も限定的だ。市場関係者によると、撤回後の原料豆価格の下落は約6%にとどまっており、消費者向け価格に即時に恩恵が及ぶ状況には至っていないという。業界筋は「コーヒー価格は上がるのが早く、下がるのは遅い」と述べている。

原料豆価格はコーヒー製品のコストの少なくとも40%を占めるため、豆価格が高止まりしている間、小売価格の高水準は続く見込みだ。米国のロースター(焙煎業者)は通常2〜3か月分の豆在庫を保有し、焙煎・包装にもさらに2〜3か月を要するほか、小売業者との価格交渉も四半期ごとに行われるため、価格低下の反映には時間がかかる。

一方、業界関係者は今後の生産シーズンに供給過剰が予想されることから、長期的には価格の緩和が進む可能性を指摘している。それでも大手コーヒーロースターの中には、交渉頻度が低い企業もあり、2026年にも価格引き上げが行われる可能性があるとの見方も出ている。

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