◎両首脳は2050年までに温室効果ガスの排出量正味ゼロに向けた気候目標を共有することに合意した。
◎両首脳は2018年にスパイ容疑で告発され中国の刑務所に収監された2人のカナダ人男性についても話し合った。
2021年2月23日 Getty Images/ワシントンD.C.ホワイトハウス

2月23日、アメリカのジョー・バイデン大統領はカナダのジャスティン・トルドー首相との首脳会談で気候変動と中国に関する政策の優先事項を共有した。

バイデン大統領が就任後初となる首脳会談の相手に選んだのはトルドー首相だった。

リベラル派のトルドー首相はアメリカファースト派のトランプ前大統領とはそりが合わず、二人の関係は常に不安定だと考えられていた。

バイデン政権は前政権の気候変動に関連する政策をことごとく覆しており、トルドー首相もこの動きを歓迎した。

トルドー首相は気候変動に関するアメリカのリーダーシップは過去数年間で大きく後退したと指摘したうえで、「その政策を覆し、気候変動に対する取り組みで世界を牽引すると誓約したことはとても素晴らしい」と述べた。

両首脳は2050年までに温室効果ガスの排出量正味ゼロに向けた気候目標を共有することに合意した。なお、2月24日に開催されるジョン・ケリー気候特使とカナダの気候トップによるサミットで、両国は炭素排出量のさらなる削減にむけた新たなコミットメントを発表することが期待されている。

バイデン大統領は首脳会談後の声明で、「両国の気候変動対策を前倒しし、他国の追随を促すことで温室効果ガスのさらなる削減を目指す」と約束した。

ケリー気候特使は、「カナダはアメリカだけでなく、他の主要経済国とも協力して気候変動に関する取り組みを積極的に進め、野心的に取り組んできた」と述べた。

ジョン・ケリー気候特使:
「パリ協定で満足してはいけない。私たちはパリ協定(の目標)以上の行動を求められている。今後10年間が気候変動と闘ううえで最も重要な期間になる」

バイデン大統領は就任初日にパリ協定に復帰する大統領令に署名し、2月19日に正式に再加入を果たした。

2021年2月23日 AP通信/ワシントンD.C.ホワイトハウス、ジョー・バイデン大統領

両首脳は2018年にスパイ容疑で告発され中国の刑務所に収監された2人のカナダ人男性についても話し合った。

カナダ政府はアメリカの要請に基づき、ファーウェイの幹部、孟 晩舟(もう ばんしゅう)を2018年に逮捕した。この動きに中国当局は強く反発し、国内で活動していたマイケル・コヴリッグ氏とマイケル・スパボー氏を報復として逮捕している。

コヴリック氏とスパボー氏は2020年6月に起訴された。

バイデン大統領は会談後の声明で2人の釈放を呼びかけ、「人間とチップ(ファーウェイ)を交換するなどあり得ない。2人が無事帰還するまで協力する」と述べた。

トルドー首相は閉会の挨拶で改めてトランプ前大統領の政策を批判し、バイデン大統領の「ステップアップ」に感謝した。バイデン大統領は1月6日のDC暴動時、トランプ前大統領に「ステップアップしなさい」と呼びかけている。

ジャスティン・トルドー首相:
「私たちは同じ方向に進み、政策を共有している。アメリカが考えを大きく改めたことはとても素晴らしい」

しかし、両首脳はカナダのアルバータ州から米モンタナ州、サウスダコタ州、ネブラスカ州、カンザス州、オクラホマ州を経由して南部テキサス湾岸に到達するキーストーンXLパイプラインの建設中止問題については言及しなかった。

バイデン大統領は就任初日にキーストーンXLの建設を中止する大統領令に署名している。

この原油パイプライン計画は2008年に提案され、経済発展と気候変動の対立を象徴する存在になった。バラク・オバマ元大統領は建設を許可しなかったが、トランプ前大統領はこの計画を強く後押しし、工事はスタートした。なお、総工事費は推定80億ドル(8,300億円)と伝えられており、トルドー首相も大規模工事がもたらす経済へのプラス効果に期待を寄せていた。

バイデン大統領は就任後初の電話会談の中で、トルドー首相とキーストーンXLの建設中止について意見を交換した。トルドー首相は大統領令に失望したと述べたが、米当局は建設中止の判断を再考することはないと主張している

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は23日の定例会見で、「バイデン大統領はトルドー首相に、キーストーンXLはアメリカの利益にならないと明言しました」と述べた。

ジェン・サキ報道官:
「バイデン大統領は温室効果ガスを排出する原油パイプラインを却下する代わりに、気候危機に対処する中で新たな雇用を創出したいとトルドー首相に伝えました」

2021年2月23日 AFP通信/ワシントンD.C.ホワイトハウス、ジョー・バイデン大統領、ジョン・ケリー気候特使
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