トランプ政権の安全保障政策、現状と課題
中国・台湾、ウクライナ・ロシア、そして中南米の国境問題が主要焦点となるが、政策は大統領の裁量と選択的関与に大きく依存し不確実性が高い
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2025年以降の米国の安全保障環境は多層的な競争と不確実性が混在する局面にある。最大の戦略的競争相手は依然として中国であり、軍事・経済の両面での対立が深刻化している。一方で、ロシアによるウクライナ侵攻は続き、欧州の安全保障負担分担とNATOの統合性が検証されている。北米の国境では移民・麻薬組織が政治課題となり、国内では政治的分断や国内治安対応が安全保障の一部として顕在化している。こうした国際・国内の課題が同時並行で存在するため、政権は優先順位と「米国の利益」を基に政策を再構成している。
トランプ政権の安全保障政策(総論)
第2次トランプ政権の安全保障政策は「アメリカ第一(America First)」という基本原理、そして「力による平和(Peace through Strength)」を中心に据えている。これにより、(1)同盟に対する期待は「費用負担・役割分担の厳格化」、(2)米国の同時多発的関与を制限する一方で「領域別に選択的介入」を行う、(3)国内の国境・治安強化を安全保障政策の柱に据える、という特徴がある。国防戦略・国家安全保障戦略では「国土防衛の優先」を明記する方向にあり、国防省も同様の方針を示している。
基本的な考え方
国家主権と国民生活の直接防衛を最優先にすること。
同盟関係は「双務的な利益の交換」として再交渉し、米国の負担を引き下げること。
軍事力と経済措置を組み合わせて「抑止と制裁」を行い、外交は取引(transactional diplomacy)を重視すること。
国内治安(国境管理、麻薬対策、移民管理)を国家安全保障の中心課題とみなすこと。
これらの考え方は、過去のトランプ政権の政策継続・強化であると同時に、世界に対する選択的関与(selective engagement)を正当化する理屈となる。
「力による平和」の追求
トランプ政権は軍備・即応能力の強化を通じた抑止力の強化を掲げる。「力による平和」とは単に軍事力の増強ではなく、即応的抑止(rapid, credible deterrent)と周辺同盟国の軍事的負担増を通じて米国の直接的な出動を減らすことを意味する。国防予算の配分は、短期即応装備(防空、ミサイル防衛、機動部隊、在来兵力の即応増強)に傾斜し、長期の装備近代化や高コストな海外展開の見直しが行われる。これにより米国内の基地防衛、領空防衛、重要インフラ保護が優先される。国防省の方針文書も国土・同盟防衛の優先を示している。
「米国第一主義」の徹底
「アメリカファースト」は外交・安全保障のあらゆる決定で費用対効果と国家利益を基準とする考え方だ。具体的には:
多国間枠組みや同盟には「より大きな負担増」を求める。
軍事支援や経済支援は「対価(例:同盟国の負担や貢献)」を求める形で提供する。
貿易や関税を安全保障手段として積極活用する(例:特定輸入品への関税・関税猶予の見直し)。実際に政権は南部国境問題やメキシコに対する関税・関税的措置を発動している。
地域別の主要な政策
中国(経済安全保障、軍事的・政治的圧力、台湾問題)
経済安全保障
トランプ政権は中国を「戦略的競争者」と位置づけ、サプライチェーンの脱中依存(onshoring/reshoring)や重要技術(半導体、AI、量子など)の対中輸出管理・投資規制を強化する。産業政策と安全保障の結合により、外国直接投資(FDI)規制やEV・軍民両用技術の輸出統制が強化される見込みだ。
軍事的・政治的圧力
海洋進出・宇宙領域・サイバー領域での対抗を強化する。米海軍・空軍の力配分はインド太平洋重視だが、同時に「国土防衛優先」の枠組みで遠隔展開の規模は限定的に管理される。米側は中国の行動に対して制裁・技術封鎖を繰り返すと同時に、同盟国に軍事的・資本的負担を求める。
台湾問題
公的には「一つの中国」政策の枠組みを完全に破棄してはいないが、実務的には台湾の自助努力を強調する傾向がある。トランプ政権の一部閣僚・顧問は台湾に対してより高い防衛負担(例:防衛支出の大幅引き上げ)を求めているとの報道がある。国防政策提言者の一人は台湾の防衛費をGDP比で大幅に引き上げるべきだと示唆しており、専門家からは台湾防衛能力の「自己負担」の強化を促す意見が出ている。
(解説)このアプローチは短期的に台湾に対する米国の直接的物的支援を抑制する可能性がある一方、抑止のための軍需・弾薬供給や訓練面では限定的支援を行うシナリオも存在する。だが、対中関係の改善に向けた経済的・外交的取引を優先する場合、台湾への直接支援が政治的取引の「レバレッジ」となるリスクもある。
ウクライナ・NATO(ウクライナ支援の見直し、NATOへの関与)
トランプ政権はウクライナ支援について「直接支援の再評価」と「NATO及び同盟国の負担増」を要求する二本柱の方針を採る。これまでのような大規模な米国単独の資金・武器供与は縮小方向となるが、限定的・選択的な軍事支援(防御用装備や弾薬)や、同盟主導の資金メカニズムを通じた供与は行われる可能性がある。2025年夏には大統領権限を用いて米在庫からウクライナへの防御装備を提供し、従来の姿勢から一部修正が見られる。
NATOに対しては、米国は加盟各国により大きな負担を求めると同時に、米軍の欧州駐留の規模や任務の再定義を図る。中期的に欧州側の防衛力増強が促されるが、米国の直接関与が後退する場合、NATO内における能力・意志の格差が顕在化するリスクがある。
中東(和平プロセス)
中東政策は「エネルギー安全保障」と同盟の地政学的利益に基づき、限定的な介入と軍事支援を組み合わせる。従来の和平仲介(イスラエル・パレスチナ)や地域秩序維持のための長期的資本投下は縮小するが、戦略資源・反テロ協力に関する二国間関係は維持される。地域の大国(サウジ、UAE、トルコ等)とは実利的な取引を優先する外交を展開する。
中南米(麻薬カルテル対策、国境警備)
麻薬対策と国境管理は国内政治上の最優先項目であり、強力な国境管理・追放政策、麻薬流通経路に対する制裁・関税措置や資金凍結が実施される。政権はメキシコや中南米諸国に対し治安協力と引き換えに貿易・関税圧力を行使する。南部国境での強硬措置が見られる。
政策の不確実性
トランプ政権の政策は「取引的・大統領の裁量」に依存する部分が大きく、特に以下の点で不確実性が高い。
同盟国との協調の継続性:要求水準が高く、同盟離反リスクがある。
台頭国に対する一貫性:米中関係や米露関係は首脳会談・貿易交渉により急変する可能性がある。
国内政治の影響:米国議会の支持・反対によって予算や軍事援助の継続性が左右される。
大統領権限の行使:武器供与や関税措置等は大統領の即時判断で変動しやすい(実際に大統領の在庫引き出しでウクライナへの装備供与が行われた事例がある)。
日本への影響(同盟関係、経済安全保障)
同盟関係
日米同盟は地理的・戦略的重要性のために維持される見込みだが、負担分担・役割分担に関する米側の要求が強まる。具体的には:
在日米軍の地位・費用負担交渉の再燃。
日本に対して防衛負担(装備調達や自衛隊の即応強化)をより強く求める圧力。
日米共同訓練・情報共有は継続されるが、米国は「より即応的で防衛に直結する能力」に重点を置くため、共同作戦の構造や役割分担の見直しが起きる。
このため日本は防衛費増額や自衛隊の運用・調達見直しを通じて「より自立的な抑止力」を整備する圧力に直面する。特に台湾有事や東シナ海での軍事プレゼンスに関しては、米国の政治判断で支援の範囲が変化する可能性があるため、日本側での危機対応能力の底上げが必要となる。
経済安全保障
対中経済対策が強化されると、日本企業のサプライチェーン再編、半導体や重要素材の輸出管理強化、二国間貿易交渉における安全保障条項の導入が進む。日米での協調があれば共同の対処が可能だが、米国が単独行動を取りやすい点はリスクである。
各国の対応(概観)
欧州(NATO): 負担分担の明確化と防衛費引き上げ要請に対して賛否が分かれる。米国の関与縮小リスクに対応し、欧州主導の軍備強化や戦力整備が進む可能性がある。
台湾: 米国の支援スタンスが変動するため、防衛自助の必要性が高まるとともに、米国の短期的な武器供与によって局所的な安定が図られる場合がある。
中南米: 米国の圧力と協力により治安協力が進むが、関税や移民政策が地域の政治を不安定化させるリスクがある。
日本政府の対応(推奨的観点)
同盟強化のための国内防衛投資を加速する(装備・弾薬備蓄、サイバー防御、早期警戒能力の向上)。
日米間での費用負担と役割分担を現実的に交渉する一方、短期的な米国の方針変更に耐える自前能力を整備する。
経済安全保障の面でサプライチェーンの多元化と国内生産拠点の強化を進める(半導体、重要素材、戦略物資)。
外交手段としての多国間協調を強化し、欧州やオーストラリア、韓国との安全保障対話を深化させる。
情報共有・共同演習の制度的強化を行い、米国の政策変動時にも機能する「自律的連結性(resilient interoperability)」を構築する。
問題点
トランプ政権の政策は短期決定・交渉志向が強く、先読み困難性が高いため、同盟国は不信や過剰適応を招きやすい。
「アメリカファースト」の徹底は、多国間協力の弱体化を招き得るため、グローバルな公共財の供給(例:自由航行、核拡散防止、気候と安全保障の結合)に空白が生まれるリスクがある。
台湾やウクライナに対する戦略的曖昧性の増大が、局地的エスカレーションを誘発する恐れがある。
国内優先の政策は国際的信頼低下を招き、長期的に米国の影響力を損なう可能性がある。
課題
同盟国は米国の負担要求に応えるだけでなく、独自の戦力と政治意思を強化する必要がある。
経済安全保障分野での日米協調(サプライチェーン、技術管理、投資規制)を制度化すること。
危機時に継続的に機能する資金・補給メカニズム(例:NATO型の共同調達、弾薬備蓄の共同化)の創設。
情報・サイバー面の協力体制を恒久化し、米国の短期政策変化に左右されない枠組みを整備すること。
今後の展望
トランプ政権が掲げる「力による平和」「アメリカファースト」は短期的には国土防衛と国内安定化を強め、戦力の即応性を高める効果を持つ。一方で、中長期的には多国間協力の弱体化や地政学的摩擦の再編を招き、各地域での不安定化をもたらすリスクがある。ウクライナ支援や台湾問題での米国の動きは大統領権限や首脳外交に左右されやすく、同盟国は自らの抑止力を強化するほか、欧州・アジアでの多国間の安全保障凝集を図る必要がある。米国内では議会と政権の間で政策が変動する余地があり、議会の反応(対露・対台支援の継続性など)も重要な変数となる。
参考となる政府・専門家のデータと注記(主要出典)
国防省・国家防衛戦略の方向性(国土防衛とインド太平洋での中国抑止の優先)。
- 大統領令・行政措置による国境・貿易措置(対メキシコ関税など)。
防衛専門家・有識者の見解(台湾の防衛費引き上げ提言など)。
NATO・欧州関係における米国の負担分担要求と欧州側の対応に関する報道・分析。
まとめ
第2次トランプ政権の安全保障政策は「国土防衛優先」「アメリカファースト」「力による平和」を軸に展開する。
同盟への期待は双務的・取引的になり、同盟国にはより大きな負担が求められる。
中国・台湾、ウクライナ・ロシア、そして中南米の国境問題が主要焦点となるが、政策は大統領の裁量と選択的関与に大きく依存し不確実性が高い。
日本を含む同盟国は、対米関係の戦略的再調整と自国の防衛力・経済安全保障の強化を並行して進める必要がある。
以下は日本側の防衛投資案、経済安全保障の分野別費用試算、そして短期・中期・長期のロードマップ(実行優先順位・概算コストを含む)である。
概要(要点)
前提:日本は既に防衛力強化を進めており、政府は「防衛費をGDP比2%へ引き上げる目標(数年間で)」を掲げている。2025年度防衛予算は過去最大の約8.7兆円であり、5年で合計約43兆円規模の増強目標が議論されている。
目標(日本側):(A)短期的に即応性・弾薬備蓄・防空ミサイル・対艦・対空センサーを強化、(B)中期的に航空戦力・艦艇・長射程打撃能力を整備、(C)長期的に防衛産業の国内供給網(半導体・高性能材料・エレクトロニクス)と人的基盤を確保する。
概算総額(10年目標):直接防衛投資+経済安全保障投資を合わせて概ね30〜50兆円規模(10年)を見込む。内訳は後述する分野別試算により提示する(下限・上限は施策の深度に依存する)。
以下、分野別案・費用試算・ロードマップを詳述する。
1. 分野別投資案と概算費用
注:下の金額は政策的判断・既存契約・過去の機器単価や既報道を参照して算出した概算値であり、詳細見積りは個別入札・契約条件で変わる。
A. 即応・弾薬備蓄・ミサイル防衛(短期最優先)
内容:弾薬(ロケット弾、各種誘導弾、艦対艦/地対艦ミサイル)、地対空(PAC-3改等)追加調達、機動発射車両、早期警戒・レーダー増備、弾薬生産ライン整備。
目安金額(3年):3〜6兆円
根拠・背景:兵站と弾薬不足は即応力に直結するため最優先。トマホーク購入等で長射程兵器導入も既に進行中。
B. 航空戦力(戦闘機・無人機・整備・弾薬)
内容:F-35など戦闘機の追加調達・稼働率維持(整備体制強化)、長距離無人機(UAS)導入、ミサイル搭載能力向上、予備部品・整備拠点整備。
目安金額(5年):4〜9兆円(F-35等の調達単価が高いため幅あり)
根拠:F-35調達は継続中であり、1機あたりの実機パッケージコストは高い(日本向けパッケージを考慮)。
C. 海上戦力(護衛艦・ミサイル艦・潜水艦)
内容:多用途護衛艦・Aegis型改修、巡航ミサイル搭載機能追加、潜水艦近代化、無人水上/水中艇の配備、哨戒艇増強。
目安金額(5〜10年):6〜12兆円
根拠:艦艇建造は1隻で数百〜数千億円規模。長期的な海上抑止能力確保に費用がかかる。
D. ミサイル防衛(BMD)と早期警戒(陸上/海上/宇宙)
内容:迎撃ミサイル(PAC-3、SM系列等)の増強、長距離探知用レーダー、宇宙・海洋センサー連携、弾道弾・巡航ミサイル対処能力強化。
目安金額(5年):3〜7兆円(システム更新・配備・保守含む)
根拠:ミサイル防衛システムは高コスト。過去Aegis Ashore案件でも数千億〜数百億ドル級の試算が提示されている。
E. C4ISR(指揮通信・センサー・情報共有)
内容:軍民統合の早期警戒網、衛星通信・地上ネットワーク強化、データ融合センター、AI解析投資。
目安金額(5年):2〜5兆円
根拠:情報優位性は現代戦の要。衛星・通信の投資は初期費用が大きいが継続的運用費も必要。
F. サイバー防衛・電子戦
内容:国家サイバー防衛力増強、SOC拡充、重要インフラ防御、電子妨害対策、人材育成。
目安金額(5年):0.8〜2兆円
根拠:民間被害の規模と国家重要インフラ保護の必要性から投資優先度が高い。
G. 弾薬・国産防衛産業基盤(生産能力・契約安定化)
内容:国内生産ラインの拡充、サプライヤー支援、戦略部品の在庫化。
目安金額(5年):1.5〜4兆円
H. 経済安全保障(半導体・素材・電池・重要インフラ)
内容:半導体生産支援(工場誘致・補助)、重要素材(希土類等)確保、電力・燃料備蓄と分散、輸出管理・投資審査の強化。
目安金額(10年):10〜20兆円(政府が提示している半導体支援策は数兆円規模〜10兆円級のレンジ)
I. 人材・運用費(給与改善・訓練・予備役整備)
内容:自衛隊員待遇改善、訓練費、共同訓練費、米国等との共同演習維持費。
目安金額(5年):2〜4兆円
分野別合計(概算)
短期(1–3年)優先分:A+部分のB/C/D=約6〜12兆円(即応・弾薬・ミサイル・緊急調達)
中期(4–7年)投資:B/C/D/E=約12〜25兆円(艦艇・航空・BMD・C4ISR)
長期(8–15年)投資(産業基盤・半導体等):約10〜20兆円
合計(10年レンジ):約30〜50兆円(施策の範囲による上振れ・下振れあり)。(上記の10兆〜20兆は経済安全保障の範囲で大きく変動)
2. 優先順位(実行順序)
即応性・弾薬備蓄(短期、国家存立の観点から最優先)
ミサイル防衛(早期警戒・迎撃)とC4ISR(情報優位)
海空戦力の維持・増強(F-35稼働率、艦艇建造)
防衛産業の国内供給網強化(半導体・部品)
サイバー・電子戦の恒久体制化
人材育成・待遇改善
3. 短期(1〜3年)ロードマップ(実行事項と費用目安)
0–6か月:国家緊急予備費の確保、弾薬在庫の優先発注、弾薬生産ラインへの補助。予算:1–2兆円。
6–18か月:PAC-3改等即応ミサイルの追加発注、地対艦ミサイル・艦艇の緊急改修、トマホーク等長射程弾薬の配備準備。予算:2–4兆円。
12–36か月:C4ISRの短期拡張(地上レーダー・衛星通信のレンタル/専用回線)、サイバーSOCの増員。予算:1–2兆円。
目的:即時的な抑止能力向上と危機発生時の初動確保。
4. 中期(4〜7年)ロードマップ
航空戦力:F-35追加発注・整備・弾薬備蓄。予算:3–7兆円。
海上戦力:多用途護衛艦・潜水艦建造の継続(年次計画化)、トマホーク発射機能の追加等。予算:4–8兆円。
ミサイル防衛の追加投資:陸海空統合のBMD能力強化。予算:2–4兆円。
サイバー・C4ISR:AI解析導入、データ統合センター整備。予算:1–2兆円。
目的:抑止の強化、同盟との協調を前提とした多層防衛構成の構築。
5. 長期(8〜15年)ロードマップ
防衛産業基盤:半導体・先端材料・製造拠点の国内回帰(誘致補助・税制優遇)、サプライチェーン二重化。予算:5–15兆円(10年レンジ)。
研究開発:次世代プラットフォーム(超音速兵器、量子センシング、宇宙軍事利用技術)、基礎研究支援。予算:1–3兆円。
人材と制度:自衛隊人員基盤の恒久的強化と予備役制度の拡張。予算:1–2兆円。
目的:持続可能な自立防衛能力と防衛産業の国際競争力強化。
6. 経済安全保障(特化項目)— 分野別政策と試算
半導体・AI基盤支援(製造誘致、補助、研究)
政府目標と整合して5〜10兆円(〜2030年)の支援枠を想定。既報では10兆円級の産業支援案が示されている。
重要素材・サプライチェーン(希土類、レアメタル備蓄)
備蓄・代替供給網整備で0.5〜2兆円。
電力・エネルギーレジリエンス(分散化・予備電源)
インフラ強化で1〜3兆円。
投資審査・輸出管理・産業スクリーニング体制強化
制度整備・人員増で0.1〜0.5兆円。
サプライチェーン多元化支援(企業補助・税制)
企業補助で1〜3兆円。
7. 財源案(実行可能性のため)
既存予算の再配分:社会保障等の構造的見直しと並行して行う。
特別会計・補正予算:緊急性ある短期支出は補正予算で対応し、中長期は通常予算に組み込む。政府は既に補正や特別予算枠の活用を行っている。
公民連携(PPP)・税制優遇:防衛産業誘致に対する税制優遇や投資減税。
日米共同負担の活用:重要装備の共同開発でコスト分担を図る(例:次期戦闘機共同開発等)。
8. 指標と評価(モニタリング)
KPI例:弾薬日量供給能力、戦闘機の稼働率、即応展開部隊数、艦艇の就役数、半導体国内生産比率、サイバー侵入検知時間。
年次評価:各年度に予算実行プランに対する評価を公開し、透明性を確保する。
9. リスクと対応策
リスク:予算増大による財政悪化、過度の輸入依存(装備)、国内産業の砂漠化(中小サプライヤーの不足)、技術移転交渉の失敗。
対応:段階的実行、同盟と共同購入、民間投資の誘導、オープンR&Dプログラムで国内企業を裾野から支援する。
10. 日本政府への提言
短期(1年):弾薬と即応能力に集中投資し、補正予算で急速配備を実行する。
中期(3–5年):艦艇・航空・BMDの整備を年次計画に落とし込み、国内生産ライン契約を長期安定契約で結ぶ。
長期(5–15年):半導体・重要素材の国家戦略を確定し、税制・補助で民間投資を誘導する。
制度面:防衛調達の透明化と迅速化(競争入札の早期化、長期発注枠設定)を行う。
国際連携:日米同盟を基礎に、豪英EU諸国との共同調達や技術協力を拡大する。
参考(主要出典)
日本の防衛白書(DEFENSE OF JAPAN 2024/2025)。
トマホーク等長射程兵器の購入・配備に関する報道。
半導体支援・国家産業支援(政府の10兆円級案に関する報道)。
F-35等主要装備の調達推移・単価に関する公表情報・報道。
