◎トランプ氏は11月の中間選挙で当選を目指すペンシルベニア州の上院議員候補と知事候補の「サポーター」として集会に参加した。
米国のトランプ(Donald Trump)前大統領は3日、FBI(連邦捜査局)がフロリダ州の自宅を家宅捜索したことについて言及し、バイデン(Joe Biden)大統領を「国家の敵」と呼んだ。
ペンシルベニア州の共和党集会に出席したトランプ氏は数千人の支持者に対し、「バイデンはFBIを政治に利用した」と主張した。
またトランプ氏は機密文書を持ち帰ったり不正利用したことは一度もないと主張し、「FBIの家宅捜索は米国の歴史上、最もひどい権力の乱用である」と訴えた。
熱狂的なMAGA(Make America Great Again)サポーターは「USA!」「俺たちの大統領!」などと叫び、トランプ氏を応援した。
トランプ氏は11月の中間選挙で当選を目指す同州の上院議員候補と知事候補の「サポーター」として参加した。
しかし、2人はほんの数分で演説を切り上げ、トランプ氏にマイクを譲った。
応援団からヘッドライナーに格上げされたトランプ氏はいつもの口調で民主党とバイデン氏を非難し、演説は2時間近く続いた。
トランプ氏は演説の大半をFBIとバイデン氏の非難に費やし、その後、2020年の大統領選は盗まれたというおなじみのテーマに移行した。
またトランプ氏はドラッグ使用者を厳しく罰するべきだと述べ、MAGAサポーターを驚かせた。
トランプ氏は現在、機密文書の取り扱いをめぐって司法省と対立している。
司法省によると、トランプ氏は最高機密と記されたファイルを含む大統領時代の文書をフロリダの豪邸「マー・ア・ラゴ」に持ち出し、不適切に管理した可能性があるという。
また司法省は現在、同氏がFBIの捜査を妨害した可能性があるとして調査を進めている。(空のファイルや文書を廃棄したと疑われる証拠が見つかった)
トランプ氏はFBIと司法省を「バイデンの犬」と呼び、一連の捜査を「魔女狩り」と非難し、3日の演説でも同じ主張を繰り返した。「FBIの侵入は恥ずべき茶番劇。バイデンは国家の敵です」
またトランプ氏は個人的な法的トラブルと支持者の政治的不満を結びつけて、こう主張した。「私たちはFBIと司法省の暴力に直面しています。これが米国の民主主義ですか?」
「バイデンの司法省、バイデンのFBIは国民の希望と夢も打ち砕いたのです」
MAGAサポーターは司法省とFBIにブーイングを浴びせ、「恥知らず!」「米国の大統領はホワイトハウスではなくペンシルベニアにいる!」などと吠えた。
ペンシルベニア州の有権者は2020年の大統領選でトランプ氏ではなくバイデン氏を選んだが、この日会場に集まった頑固なMAGAサポーターはトランプ氏の味方だった。
AP通信の取材に応じた男性サポーターは、「FBI解散」と書かれたTシャツを着ていた。「FBIの不法侵入は仕組まれたものに違いありません。バイデン権力乱用政権に解散を命じます!」
ニューヨーク州バッファローから駆け付けた女性は、「民主党政権になってからろくなことがない」と語った。「インフレ、値上げ、インフレ、値上げ、いい加減にしろと言いたいです!」
この女性はトランプ氏が関与した問題(1月6日の議会襲撃、ウクライナ大統領への圧力、選挙捏造の主張、脱税疑惑など)を信じるかと問われ、「信じない!」と断言した。「民主党は口ばっかりで証拠を提供していません!」
この女性の友人は司法省がトランプ氏を起訴すれば「南北戦争が始まる」と主張した。「私は暴力を否定しますが、私たちの大統領を刑事告訴すれば、内乱は避けられないでしょう」
トランプ氏自身も、FBIの捜査がかつて経験したことのない「反動」を生むと指摘している。
11月の中間選挙は共和党vs民主党ではなく、「トランプ氏vs民主党」の戦いになるかもしれない。トランプ氏が支持を表明した候補は一部を除いて劇的な勝利をおさめている。
多くの専門家が11月の中間選挙をトランプ氏が解き放った「トランピズム(トランプ+ポピュリズム)」の是非を問う国民投票とみなしている。
その結果はバイデン氏の今後の政権運営だけでなく、2024年の大統領選にも大きな影響を与える可能性がある。
トランプ氏は立候補をほのめかしており、その可能性は高いと信じられている。
中間選挙でトランプ候補が結果を残せば、連邦議会の共和党員は「共和党の顔はトランプ氏」とみなすだろう。
敗北した場合はフロリダ州のデサンティス(Ron DeSantis)知事やペンス(Mike Pence)前副大統領に大きなチャンスが訪れる。
民主党もペンシルベニア州の選挙戦に力を入れており、現職の副知事で上院の議席確保を目指している。
一方、同州知事選の共和党予備選で大勝したマストリアーノ(Doug Mastriano)氏はトランプ氏の力を借りて支持を一気に伸ばした。同氏は昨年1月6日の襲撃事件に参加した地方議員のひとりである。
マストリアーノ氏が知事選に勝利すれば、同州の選挙制度は共和党仕様(郵便投票制限など)になる可能性がある。
民主党は打倒マストリアーノを目指して同州の司法長官を候補に擁立し、バイデン氏はこの数日、同州内で複数のイベントを開催、民主党支持者に奮起を促した。
バイデン氏は今週、熱狂的なMAGAサポーターを民主主義の敵と非難し、共和党議員の猛反発に直面した。
バイデン氏は「米国の民主主義を脅かしているのは大多数の共和党員ではなくMAGAサポーターである」と呼びかけた。
トランプ氏は3日の演説でバイデン氏のテレビ演説を「米国の大統領が行った最も悪質で憎悪に満ちた分断を招く演説」と呼んだ。