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なぜベネズエラなのか?軍事増強をめぐるトランプ発言の変遷

トランプ大統領は今年に入ってからカリブ海とベネズエラ周辺に海軍を大規模に展開し、軍事的圧力を強めてきたが、その説明は局面によって大きく異なるものとなっている。
トランプ米大統領(左)とベネズエラのマドゥロ大統領(ロイター通信)

トランプ政権がベネズエラに対する大規模な軍事作戦を実行し、独裁者のマドゥロ(Nicolas Maduro)大統領とその妻を拘束したとの発表があるなか、トランプ政権がこれまで打ち出してきた「軍事的圧力の理由」が場面ごとに変遷しているとして、国内外で疑問の声が強まっている。

トランプ(Donald Trump)大統領は今年に入ってからカリブ海とベネズエラ周辺に海軍を大規模に展開し、軍事的圧力を強めてきたが、その説明は局面によって大きく異なるものとなっている。政府高官らは当初、同地域での軍事作戦について「米国への麻薬流入を阻止するため」と説明した。しかし、専門家は実際の麻薬密輸ルートの多くがコロンビアを経由し、主要なフェンタニル流入源は中国・メキシコ系の供給網であると指摘しており、この説明には矛盾があるとの見方が出ている。

さらにトランプ氏は、マドゥロ政権が「米国の刑務所や精神病院の収容者を国外に放出し、米国内に流入させている」と主張したが、これを裏付ける証拠は提示されていない。移民政策の専門家によると、多数のベネズエラ移民が自国の経済・政治危機を逃れ米国に移住している事実はあるものの、政権側が言及するような組織的な「放出」が行われた形跡はないという。

12月中旬にはトランプ氏がX(旧ツイッター)で、ベネズエラが「米国から石油や土地を奪った」と発言する場面も見られた。これは1970年代の海外石油企業の活動に遡る内容で、公式の外交政策として提示されていない歴史的事実を引き合いに出したものとして波紋を呼んだ。トランプ政権内でも、石油や資源に関する発言は一貫した外交戦略として明確に言及されてきたわけではなく、関係者の間で発言の整合性が問われている。

このような説明の変遷について、政権内の実務者は「状況に応じて最適な説明を模索してきた」と語る一方で、野党や外交専門家からは「一貫性を欠く」との批判が出ている。マドゥロ政権側は米国の軍事的動きを「軍事侵略行為」と非難し、国際社会に対して抗議を続けている。

トランプ氏はこれまで「戦争は避ける」と有権者に約束してきたが、ベネズエラに対する軍事作戦は陸上部隊を投入するなどリスクを伴う内容となっている。米国内では、軍事行動の根拠や目的について透明性を求める声が強まっており、連邦議会やメディアでの議論が活発化している。民主党の議員らは、軍事作戦の承認を得ないまま大規模な軍事行動が進められたとして政権を批判した。

今回の軍事行動は米国とベネズエラの関係だけでなく、米国内の政治的対立や外交政策の信頼性にも影響を及ぼす可能性がある。軍事的圧力の理由についての説明が流動的である現状は、今後の米国の対外戦略に新たな不確実性をもたらすとの見方も出ている。

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