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米財務長官、金融システムの規制緩和目指す意向示す

FSOCは2010年のドッド・フランク法に基づき設立されており、連邦準備制度理事会(FRB)、証券取引委員会(SEC)、消費者金融保護局(CFPB)など複数の金融規制機関のトップが投票メンバーとして参加している。
2025年11月21日/米ワシントンDCホワイトハウス、ベッセント財務長官(AP通信)

米国のベッセント(Scott Bessent)財務長官は11日、米金融システムの規制枠組みを緩和する方針を明らかにし、金融安定監視評議会(FSOC)のあり方を見直す考えを示した。

FSOCは2008年の金融危機(リーマンショック)を受けて設立された監督機関であり、金融システム全体のリスクを監視し、関係規制当局の連携を図る役割を担っている。

ベッセント氏は同日公開した書簡で、過去の規制措置が「過度かつ重複した規制を生み出し、経済成長と金融安定を阻害してきた」と指摘した上で、政府のアプローチを転換する意向を表明した。

またベッセント氏はFSOCを率いる立場から、現行の金融規制の中で企業や市場に過度の負担を課している部分を特定し、規制緩和に向けて検討を進めるよう求めた。

FSOCは2010年のドッド・フランク法に基づき設立されており、連邦準備制度理事会(FRB)、証券取引委員会(SEC)、消費者金融保護局(CFPB)など複数の金融規制機関のトップが投票メンバーとして参加している。これまでFSOCは金融機関のリスク評価や監督の調整に重点を置いてきたが、ベッセント氏は経済成長を阻害している規制がないか見直す必要があると強調している。

また同日、FSOCの構造や任務を大幅に見直す方針も提示された。新たな取り組みとして、市場や家計の強靭性(レジリエンス)、人工知能(AI)、サイバー攻撃など多岐にわたるリスクに対応するワーキンググループの設置が計画されており、規制と技術革新の両立に向けた議論を進める枠組みが盛り込まれているという報道もある。こうした動きは政府全体の規制緩和路線と整合性を持つものとされる。

ベッセント氏の規制緩和提案に対しては、与野党から反発の声が上がっている。特に民主党のウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員は現状の金融システムに潜在的な亀裂が見える時期に規制を緩めることは「無謀」であり、金融安定を危うくするとの見解を示している。

ウォーレン氏は最近破綻した複数の企業を例に挙げ、「金融システムや経済全体が既にストレスを受けている状況での規制緩和はリスクを高める」と批判した。

ベッセント氏は財務省でも異例の経歴を持つ人物で、ヘッジファンド業界に在籍していた経験もあり、市場原理を重視する姿勢が強いとの評価がある。財務省内では安全性と成長促進のバランスをどう取るかが今後の焦点となる見込みだ。金融規制の見直しは今後、FSOCの正式な評価や議会との協議を経てさらに具体化するものとみられる。

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