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「肉のような魚で勝負!」商品開発進める米国の水産業界


米国の1人当たり年間魚消費量は約19ポンド(8.61キロ)にとどまり、世界平均を大きく下回る水準が長年続いている。
魚のイメージ(Getty Images)

米国の水産業界が魚の消費拡大に向けた新たな戦略に乗り出している。鍵となるのは、魚をあえて「肉のように見せる」商品開発である。魚特有の見た目や匂いに抵抗を感じる消費者が多い現状を踏まえ、味や食感、形状を肉製品に近づけることで需要喚起を狙う動きが広がっている。

この取り組みは、マサチューセッツ州ボストンで開かれた北米最大級の水産見本市「Seafood Expo North America(シーフード・エキスポ・ノースアメリカ)」でも顕著に見られた。会場では、マグロを使ったナゲットやミートボール、サーモンのスナック、エビのバーガーなど、一見すると鶏肉や牛肉の加工品と見分けがつかない商品が相次いで披露された。いずれもスパイスや調理法を工夫し、「魚臭さ」を抑えつつ、親しみやすい味わいに仕上げているのが特徴である。

背景には、米国人の魚介類消費量の低迷がある。米国の1人当たり年間魚消費量は約19ポンド(8.61キロ)にとどまり、世界平均を大きく下回る水準が長年続いている。健康志向の高まりから魚の栄養価は広く認識されているものの、調理の手間や骨の存在、独特の匂いなどが敬遠される要因となってきた。結果として、水産市場は大きな成長機会を持ちながらも停滞感を脱しきれていない。

こうした状況を打開するため、業界は肉中心の食文化に歩み寄る戦略を採用した。特に若年層や子どもを対象に、ホットドッグやチキンナゲットといった馴染みのある形状で魚を提供することで、心理的なハードルを下げる狙いがある。家庭での調理が簡単である点も重視されており、冷凍食品やスナックとしての展開が進んでいる。

一方で、この動きに対しては慎重な見方もある。魚本来の風味や文化的価値が損なわれる可能性や、過度な加工による健康面への影響を懸念する声がある。また、魚を好まない層がこうした商品に本当に手を伸ばすのかは未知数で、市場の反応はまだ定まっていない。

それでも業界は、新しい食べ方が消費を変える可能性に期待を寄せている。かつて寿司が米国で一般化したように、魚のイメージを刷新することが需要拡大につながるとの見方もある。「肉のような魚」という発想が、停滞する水産市場の打開策となるのか。米国の食文化の変化を占う試みとして注目される。

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