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米国のラビ層で多様化進む、女性やLGBTQ+が増加

ユダヤ教界のラビ層の多様化は、伝統的権威構造に変化をもたらしつつあるだけでなく、宗教界全体の将来像を示す重要な動きとして注目されている。
2025年12月16日/米ニューヨーク市のシナゴーグ(AP通信)

米国のラビ(ユダヤ教の司祭)とその候補者の層がこれまでになく多様化している。女性やLGBTQ+(性的少数者)の比率が高まり、宗教指導者の顔ぶれが大きく変わりつつあることが関係者の証言や調査で明らかになった。

米国で最も歴史のあるユダヤ教改革派の一つであるヘブライ・ユニオン・カレッジで1976年に唯一の女性として卒業したローラ・ゲラー(Laura Geller)氏はAP通信の取材に対し、当時を振り返りながら「女性はユダヤ教を変えた」と語った。女性の声が過去には無視されていたが、今日では複数の宗派がこの変化を受け入れ、女性が宗教界で影響力ある役割を担うようになったという。

こうした流れは改革派や保守派、非宗派のユダヤ教コミュニティで特に顕著だ。伝統的に男性中心であったラビの世界において、女性が多数派を占める神学校も現れ、女性ラビの数は顕著に増加している。非正統派のラビ総数が4000人を超えるなかで、依然として男性が多数を占めるものの、女性は着実にその割合を高めている。

また、LGBTQ+を公表するラビや候補者の数も増えている。これはユダヤ社会全体の多様化を反映したものとの指摘があり、異なる背景や人生経験を持つ人々が聖職への道を選ぶ傾向が強まっている。従来、宗教界では異性愛の男性が支配的だったが、今日の若い信徒の多くは「ラビと言えば女性を思い浮かべる」と語るようになったという。

ニューヨーク市にあるシナゴーグの副ラビ、レベッカ・ワイントラウブ(Rebecca Weintraub)氏は、世代をまたいだ変化を目の当たりにしていると述べる。かつては男性ラビが当然視されていたが、現在では複数の女性ラビが同教会で奉仕し、信徒からの受け入れも進んでいる。

多様化の背景には、ユダヤ教コミュニティそのものが人種や家族構成、性的指向などで広がっていることがあると、ブランダイス大学コーエン現代ユダヤ研究センターは説明する。「非常に多様な背景を持つ人々がラビを目指し、既成の枠組みに新風を吹き込もうとしている」という。

一方で、こうした変化には課題も伴う。多様な信徒や指導者を抱える教会や神学校は、そのニーズに応えるための体制や理解を十分に整えていないとの指摘がある。また、黒人ラビやLGBTQ+のラビは、伝統的な宗教文化の中で孤立感を抱くこともある。

宗教指導者の仕事はやりがいが大きい一方で、感情的・精神的負担も大きい。葬儀や結婚、日々の相談対応など、人生の節目に向き合う機会が多いことから、燃え尽き症候群を訴えるラビも少なくない。こうした現実を踏まえ、若い候補者たちは「多様な声こそがコミュニティを強くする」と前向きな展望を示している。

ユダヤ教界のラビ層の多様化は、伝統的権威構造に変化をもたらしつつあるだけでなく、宗教界全体の将来像を示す重要な動きとして注目されている。

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