◎共和党が主導するテキサス州は妊娠6週目以降の中絶を禁止する「ハートビート法」を施行した。
9月1日、米テキサス州は妊娠6週目以降の中絶を禁止する「ハートビート法」を施行した。一方、最高裁判所は国内で最も厳しく物議を醸している同法を保留するという緊急上訴に沈黙した。
最高裁判所がこの州法の効力維持を許可した場合、1973年のロー対ウェイド判決で認められた中絶の権利が初めて覆されることになる。
※ロー対ウェイド事件(1973年):最高裁判所は妊娠中絶を「合衆国憲法で保障される権利」と認め、堕胎禁止を初めて違憲と認めた。
中絶反対派は胎児の心拍(ハートビート)を検出した時点で中絶を禁じるべきと主張しているが、医師や女性の権利団体はこの主張を強く批判している。妊娠を望んでいる女性は4週目か5週目で気づくことが多いと言われているが、望んでいない女性は6週目を過ぎても気づかないことが多々ある。
赤い州を率いる共和党のグレッグ・アボット州知事は今年5月に法案に署名した。しかし、女性の性と健康を支援する非営利団体のプランド・ペアレントフッド(PPFA)やアメリカ自由人権協会(ACLU)を含む権利団体がハートビート法を違憲と見なすよう裁判所に訴えたため、施行は見送られていた。
ACLUは1日、「最高裁判所は私たちの上訴に応えず、中絶を求める数百万人の女性の権利を踏みにじった」と述べた。また、テキサス州の中絶の約85%は妊娠6週目以降に行われていると強調し、ハートビート法を「違憲」と非難した。
PPFAも同法を非難し、「私たちは後退しておらず、まだ戦っている」とツイートした。
最高裁判所は上訴を棄却したわけではないため、今後の裁判で違憲と見なされればハートビート法は無効になる。
ジョー・バイデン大統領は1日の声明で、「テキサスの州法はロー対ウェイド事件の下で確立され、半世紀近く支持された憲法上の権利を露骨に侵害している」と述べた。「州法は中絶を支援した人を訴える権利も認めています...」
ハートビート法は、妊娠6週目以降の女性に中絶手術を提供した医師と中絶に関与した個人や団体を訴える権利を「民間人」に与える。
中絶擁護派は同法が施行されることで、多くの女性がテキサス州外での中絶を強制され、費用や休業などの問題に直面すると主張している。また、個人で入手可能な薬を使って中絶を自己誘発する女性の数が増えることも予想されている。
中絶を禁止する法案はテキサス州を除く少なくとも12の州議会で可決されているが、施行できた州はひとつもなかった。
ハートビート法は、他の州とは異なるスタイルを取っている。
民間人は中絶提供者(医師)と「中絶の提供に関与した人」を訴える権利を与えられる。関与した人には、妊婦を病院に連れて行った人、病院の職員、家族なども含まれる可能性がある。民間人は州法に基づき、中絶提供者と中絶に関与した人に最大10,000ドルの損害賠償を起こすことができるようになった。
またハートビート法は、医師の署名を必要とする緊急中絶は6週目以降であっても例外と認めているが、レイプや近親相姦による望まない妊娠の中絶は認めていない。
ACLUを含む権利団体は、この州法が中絶を求める女性に対する嫌がらせや「賞金稼ぎ訴訟」を誘発する可能性があると警告した。
テキサス州の共和党員、シェルビー・スローソン議員はハートビート法の施行を称賛した。同じく共和党のジェフ・リーチ議員はツイッターに、「テキサスはアメリカを先導している!」と投稿した。
米主要メディアによると、テキサス州議会はアメリカの妊娠中絶の約40%を占めるピルの使用を制限する新しい法案の準備を進めているという。