米国で膝前十字靱帯(ACL)を断裂する高校女子アスリートが急増
ACL損傷は膝の大ケガであり、回復には手術や長期のリハビリを要することが多いが、関連する予防研究やトレーニング方法が十分に普及していないとの批判が強まっている。
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米国の高校女子アスリートにおいて膝前十字靱帯(ACL)の断裂が急増しており、親や専門家らは競技現場での予防対策強化が急務だと指摘している。ACL損傷は膝の大ケガであり、回復には手術や長期のリハビリを要することが多いが、関連する予防研究やトレーニング方法が十分に普及していないとの批判が強まっている。
ペンシルベニア州ハリスバーグの高校女子サッカー選手ソフィア・テピチン(Sofia Tepichin)さんは、練習中に相手ディフェンダーをかわした際に不自然な着地をして左膝に激痛を感じ、倒れた。その場で自分のACLが断裂したと直感したという。テピチンさんのようにACLを断裂した女子高校生アスリートの数は増加傾向にあり、スポーツ界全体に予防対策の徹底を求める声が高まっている。
研究によると、高校年代の女子アスリートは男子や成人と比べてACL損傷を負う確率が最大で8倍にも達するケースがあり、特にサッカーやバスケットボールなど、急激な方向転換を伴う非接触の場面で発生しやすいとされる。それにもかかわらず、多くの高校やクラブチームでは選手のケアや予防教育が不十分で、監督やコーチの知識不足やリソースの不足が背景にあると指摘されている。
身体運動のバイオメカニクスを専門とする理学療法士らは、ウォーミングアップや筋力強化を含む予防トレーニング、例えば「FIFA 11+」や「PEP」などのプログラムがACL損傷のリスクを低減する可能性を示している。しかし、これらの方法は多くの高校チームの日常的な練習には取り入れられていない状況だ。専門家のホリー・シルバース=グラネリ(Holly Moore-Slevis-Granelli)さんは、「このデータは25年以上前から存在しているのに、現場で実践されていないのが問題だ」と述べている。
全国ACL傷害連合(National ACL Injury Coalition)の分析では、2007年から2022年までの間に高校生アスリートのACL損傷発生率は年間平均約26%増加し、女子では32%以上に上ったのに対し、男子は14.5%にとどまっている。こうした統計は女子アスリートが特に脆弱である現状を示すものだ。
ACL損傷を負った選手やその家族は、リハビリや復帰までの過程で孤立感や精神的負担に苦しむことが少なくない。ACL断裂は競技生活を中断させ、元のパフォーマンスレベルに戻れないケースも多く、さらに再び断裂するリスクや変形性関節症などの長期的な合併症の可能性もある。こうした深刻な影響から、専門家らはACL損傷を脳震盪と同様に重視すべきだと提言している。
ペンシルベニア州の高校でバスケットボール中にACLを断裂したソフィア・ジェラルディ(Sofia Giraldi)さんは、医師から今後もスポーツ時に膝用ブレースが必要になると告げられた。彼女は手術後、今シーズンを欠場し、来冬のシーズン復帰を目指しているが、過去に予防トレーニングを受けた記憶はないという。
調査では、多くのコーチがACL予防プログラムを知らず、トレーニング導入の時間がないと答える例もあるという。こうした現状への対応として、全米ユースサッカー協会(American Youth Soccer Organization)は年齢別の神経筋トレーニングを導入し、プレシーズンから正しいフォームや動作パターンを習得するプログラムを提供する計画を発表した。
また、テキサス州の病院ではプロレベルで導入される高度な3D解析を用いた予防プログラムが高校チーム向けにも提供されており、選手ごとの弱点評価を通じて怪我のリスクを低減する取り組みが進められている。今後は栄養や睡眠管理といった要素も加えた包括的なプログラム開発が検討されている。
選手本人や保護者からも「変化が必要だ」との声が上がり、現場での教育強化や予防策の普及が求められている。ACL損傷はスポーツにおける重大な障害であると同時に、選手の将来に大きな影響を与える問題として、関係者の取り組みが一段と重要視されている。
