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米保険当局トップ「麻しんワクチンを接種してください」異例の呼びかけ

米国内では特にサウスカロライナ州で数百件規模の集団感染が報告され、この件数は昨年のテキサス州での流行を上回るものとなっている。
2025年3月1日/米テキサス州、麻しんワクチン接種の様子(AP通信)

米国で麻しん(はしか)の感染が広がる中、連邦保健当局のトップが8日、国民にワクチン接種を強く呼びかけた。報道によると、複数の州において麻しんの集団発生が確認され、未接種者を中心に感染が急増している。米国は麻しんを撲滅した国として「排除状態」を維持してきたが、最近のケース増加によりその地位を失う可能性が高まっている。

この危機を受けて、メディケア・メディケイド・センター(CMS)のメフメット・オズ(Mehmet Oz)長官は8日、CNNの番組で「ワクチンを接種してください」と国民に強く訴えた。オズ氏は心臓外科医としても知られる人物で、進行中の麻しん流行に深刻な懸念を示し、「我々にはこの問題を解決する手段がある」と述べ、ワクチンの重要性を強調した。

またオズ氏は「麻しんが極めて危険というわけではなく、人によって感受性も異なる。しかし、麻しんはワクチンで簡単に防ぐことができる」と語り、感染リスクを指摘した。また、メディケイドに加入している人はワクチン接種の費用負担がないことも説明し、保険制度がアクセス障壁にならないと強調した。

米国内では特にサウスカロライナ州で数百件規模の集団感染が報告され、この件数は昨年のテキサス州での流行を上回るものとなっている。またユタ州とアリゾナ州の境界地域でも感染者が相次ぎ、ほかにも複数州で感染が確認されている。小児や未接種者が大半を占め、感染拡大の中心となっていると専門家は指摘している。

このような状況下で、麻しんワクチンに対する懐疑的な見方や、ワクチン自体の安全性についての不安が感染拡大に拍車をかけているとの見方もある。オズ氏の上司であるケネディ・ジュニア(Robert F. Kennedy Jr.)保健福祉長官はこれまでワクチンに対して疑問を呈する発言をしてきた経緯があり、ワクチンに関する政府内のメッセージが一致していないとの批判も出ている。長官は個人的選択の重要性を強調する一方で、麻しんワクチンについては接種を支持する立場を示しているが、過去の発言が混乱を招いているとの指摘がある。

保健当局は麻しんワクチンの接種率低下と、子どもの免疫の欠如が今回の広範な感染拡大の主因であると分析している。一般的に、集団免疫を維持するには95%以上の接種率が必要とされているが、近年のワクチン忌避や免疫への不信感の高まりにより、その水準を下回る地域が増えている。専門家はワクチン接種を進めることが感染拡大を抑える唯一の有効策であるとして、国民に速やかな対応を呼びかけている。

オズ氏の発言は米国におけるワクチン支持の全国的な呼びかけとしては最近では異例の強いメッセージであり、感染拡大に歯止めをかけるための重要な転換点となる可能性がある。政治的な論争や情報の混乱が続く中、公衆衛生当局が信頼を回復し、感染予防策の普及を進めることが今後の課題になる。

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