米最高裁で「出生地主義」修正の口頭弁論、トランプ氏も出席
争点となっているのは、米国で生まれた子どもに自動的に市民権を与える「出生地主義」を制限する大統領令の合憲性である。
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米連邦最高裁は4月1日、トランプ(Donald Trump)大統領が進める出生地主義の見直しをめぐる訴訟の口頭弁論を開き、多くの判事が政権側の主張に懐疑的な姿勢を示した。判決は今夏までに示される見通しで、米国の市民権制度の根幹を左右する重要な判断となる。
争点となっているのは、米国で生まれた子どもに自動的に市民権を与える「出生地主義」を制限する大統領令の合憲性である。トランプ氏は昨年の就任初日にこの大統領令に署名し、少なくとも片方の親が米国市民または永住権保持者でなければ、米国内で出生しても市民権を認めないとした。これは長年の憲法解釈を大きく変更する内容である。
合衆国憲法修正第14条は「米国内で生まれ、その管轄に服するすべての者は市民である」と規定しており、これまで不法移民や一時滞在者の子どもを含め、ほぼすべての出生者に市民権を認める根拠となってきた。出生証明書は長年にわたり、市民権を証明する基本的な書類として機能してきた。
これに対し政権側は、「管轄に服する」という文言を狭く解釈し、不法移民や短期滞在者は米国への十分な忠誠や法的結びつきを持たないため、その子どもも対象外だと主張した。しかし口頭弁論では、保守派とリベラル派の双方の判事がこの論理に疑問を呈した。保守派のロバーツ(John Roberts)首席判事らは、外交官の子など、例外的なケースを一般化して適用する政権側の議論について、「非常に特異な論法だ」と批判的に指摘した。
また、1898年の最高裁判決「ウォン・キムアーク対米政府事件」は外国人の子であっても米国内で出生すれば市民権を認めると判断しており、今回の審理でも重要な先例として繰り返し言及された。一部の判事はこの判例と政権の主張との整合性について厳しく問いただした。
さらに、実務面での影響も焦点となった。大統領令が有効となれば、年間約25万人の子どもが市民権を失う可能性があるとされ、一部はどの国の国籍も持たない「無国籍」となる恐れが指摘されている。加えて、親の在留資格を証明する手続きが必要となり、社会保障や教育など幅広い分野で混乱が生じる可能性がある。
この大統領令はすでに複数の下級審で違憲と判断され、差し止められている。最高裁は今回初めてその是非を本格的に審理した。審理では政権側に厳しい質問が相次いだ一方、出生地主義を擁護する側の主張についても一定の検討が必要との見方が示され、最終判断の行方はなお流動的である。
なお、この日の審理にはトランプ氏本人も出席し、現職大統領として初めて最高裁の口頭弁論を傍聴したことも注目を集めた。法廷内外では抗議活動も行われ、本件の政治的・社会的関心の高さを浮き彫りにした。
出生地主義は南北戦争後、解放された奴隷とその子孫に市民権を保障するために確立された原則で、その変更は憲法解釈の大きな転換を意味する。最高裁が従来の解釈を維持するのか、それとも新たな判断を示すのか。今回の判決は、米国の移民政策だけでなく、国家のアイデンティティそのものに影響を及ぼす可能性がある。
