トランプ税還付、ガソリン急騰で相殺される見通し 中東危機
トランプ大統領は昨年末の演説で、今年の春に記録的な税還付で消費が拡大すると強調していたが、情勢は変わりつつある。
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米国で今年の税還付が過去最大規模になるとの見通しが広がっているものの、イランとの戦争によって急騰したガソリン価格がその恩恵をほぼ消し去る可能性が高まっている。トランプ(Donald Trump)大統領は昨年末の演説で、今年の春に記録的な税還付で消費が拡大すると強調していたが、情勢は変わりつつある。
トランプ氏は「来春は史上最大の税還付シーズンになる」と年末の全国演説で語り、有権者に経済改善への期待を訴えた。しかし、2月28日に始まったイランとの戦争を契機に原油とガソリンの価格が急騰し、国民が受け取る税還付金の大半が燃料費に吸い取られる可能性が出てきた。
米国内のガソリン平均価格は3月21日時点で1ガロン当たり約3.94ドル(1ドル=159円で計算した場合、リッター約165.3円)に達し、1カ月前から1ドル以上上昇している。専門家によると、戦争が早期に終息しても供給網の混乱や生産体制の立て直しには時間がかかるため、価格はしばらく高止まりする見込みだ。
ガソリン価格の上昇は家計の支出構造にも大きな影響を及ぼす。調査会社による試算では、低所得層ほど収入に占めるガソリン費の割合が高く、所得下位10%の世帯は収入の約4%を燃料費に充てているのに対し、上位10%は1.5%程度にとどまる。燃料費負担の重さは家計を直撃し、税還付が「追いつかない出費」になる可能性が高い。
ガソリン高騰の影響は消費全体にも波及すると予想される。燃料費に回された支出はレストランでの食事や衣料品、娯楽など他の消費活動に回らなくなるため、経済成長のペースが鈍化すると見込まれる。複数の経済アナリストは、今年の米経済成長率は戦前の予想より低くなるだろうと指摘している。
こうした中、低・中所得層の負担感が強まっている。ガソリン価格が5月に1ガロン当たり4.36ドル(1ドル=159円で計算した場合、リッター約183円)に達するという予測もあり、平均的な世帯では燃料費の増加が約740ドルにのぼり、平均税還付額の748ドルとほぼ相殺される計算になるという分析も出ている。
さらに経済全体では、ガソリン価格高騰がインフレを押し上げるとともに消費を冷え込ませ、2026年の国内総生産(GDP)成長率予想が従来の年2.5%から1.9%へと引き下げられるとの見方も出ている。燃料費の高止まりは特に地方や車社会の地域で家計や中小企業にさらなる圧力をかけることが懸念されている。
専門家は「税還付の増加は短期的な消費刺激策として有効だが、高騰する燃料費が家計の可処分所得を削ることで、結果的にその効果が相殺される可能性が高い」と指摘する。消費者が税還付を生活費に回さざるを得なくなる状況は「景気回復のシグナル」というよりも、経済全体の不透明感を強める要因となりつつある。
トランプ政権はエネルギー市場の安定化や価格抑制のための政策を模索するとみられるが、戦争と世界的な供給不安が続く限り、国民の実質的な購買力が弱まるリスクは依然として高い。ガソリン価格の急騰と税還付の相殺という構図は、今春以降の米国経済の重要な焦点となる。
