睡眠トラッキングデバイスには限界がある、正しく理解することが重要
ウェアラブルは心拍数や体の動きをもとに睡眠状態を推測しているに過ぎず、脳波を直接測定する睡眠研究所の調査とは精度に差がある。
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スマートフォンのアプリやスマートウォッチ、リング型センサーなどのウェアラブル機器を使って自分の睡眠を記録する人が世界中で増えている。しかし、こうした「睡眠トラッキング」デバイスには限界があり、専門家は利用者がそれを正しく理解することの重要性を指摘している。
米国では2023年に睡眠トラッキング機器の市場規模が50億ドルに達し、2030年までにその規模は倍増すると予測されている。しかし、これらの機器が示すデータが必ずしも実際の睡眠状態を正確に反映しているわけではない。ウェアラブルは心拍数や体の動きをもとに睡眠状態を推測しているに過ぎず、脳波を直接測定する睡眠研究所の調査とは精度に差がある。特に浅い睡眠や深い睡眠、レム睡眠といった睡眠ステージの判定は限定的で、専門のラボで行われるポリソムノグラフィー検査の方がはるかに正確だとされる。
ミシガン大学は、主要ブランドのアルゴリズムが入眠や睡眠継続の判定には高い精度を示すようになっている一方で、睡眠ステージに関する推定はまだ改善の余地があると指摘している。脳波などを使った検査を行わなければ、ノンレム睡眠とレム睡眠の正確な区別は難しいという。
一方で、専門医の間でもウェアラブル機器の評価には差がある。モアハウス医科大学は患者がトラッカーのスコアを気にしすぎることに懸念を示している。患者の中には前夜にどれだけレム睡眠が取れたかといった細かな数字に振り回される人もおり、その結果として不安やストレスを感じるケースがあるという。こうしたスコアは長期的な傾向の把握には役立つが、1晩の結果だけに一喜一憂するのは適切ではなく、睡眠の本質的な問題解決につながらないと専門家は指摘する。睡眠の質を高めるには、寝る前の環境整備やスクリーンを避けるなどの「睡眠衛生」を改善する方が重要だとしている。
しかし、デバイス自体を完全に否定するわけではない。ウェアラブルは利用者の睡眠に対する関心を高め、日々の生活リズムの調整に役立つ可能性があると評価している。例えば、適切な就寝時間を見つけることで日中の覚醒感が改善することもあり得るという。
実際の利用者の中には、機器のデータを参考に生活習慣を変えた人もいる。アトランタ在住の中学校教員は睡眠の質が低い日の前夜にアルコールを摂取していることをデータから把握し、その後飲酒を控えるようにしたという。また、深夜の食事を避けることで睡眠の質が向上したと感じていると話す利用者もいる。
一方で、データに過度に依存するあまり不安を強める「オルソスモニア」と呼ばれる状態に陥る人も確認されている。こうしたケースでは、睡眠トラッカーがかえってストレス源となっているため、専門家は必要に応じて医療機関に相談することを勧めている。
今後の技術進歩により、ウェアラブルがより高度な疾患検出や精神状態の変化の早期発見に役立つ可能性も研究者から示されている。特に医療リソースが限られた地域では、遠隔で健康状態をモニタリングするツールとして役立つとの期待もある。
