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子どものスクリーンタイム制限はもはや十分ではない=米国小児科学会

この指針は、過去20年にわたる多くの研究をレビューした結果を基にしており、子どもを取り巻くデジタルメディアの現状を「スクリーンタイムの量だけで評価する時代は終わった」と位置付けている。
スマートフォンでゲームをする少年(Getty Images)

米国小児科学会(American Academy of Pediatrics:AAP)は20日、従来の「子どものスクリーンタイム制限」だけではデジタル環境下での健康リスクに十分に対応できないとの新たな指針を発表した。この指針は、過去20年にわたる多くの研究をレビューした結果を基にしており、子どもを取り巻くデジタルメディアの現状を「スクリーンタイムの量だけで評価する時代は終わった」と位置付けている。

AAPの報告書は、スマートフォンやタブレット、ソーシャルメディア、ゲーム、動画配信サービスなどが形成する現在のデジタル環境を「単なる受動的な視聴メディアではなく、高度に設計された没入型エコシステム」と表現する。このエコシステムには自動再生機能、頻繁な通知、アルゴリズムによるコンテンツ推薦など、ユーザーの注意を引き付け続け、長時間の使用を促す仕組みが組み込まれているという。こうした設計は単純な視聴時間の制限だけでは制御できない影響を子どもに与えているとする。

報告書によると、低質なデジタル利用、すなわち意図せず次々と流れる映像や刺激的なコンテンツへの「無意識なスクロール」は睡眠の質の低下、注意力の欠如、学業成績の低下、感情の調整困難といった健康や発達面への負の影響と関連している。一方で、教育的、創造的、社会的な価値を持つ高品質なコンテンツは、適切な条件下では発達を促進する可能性があるとしている。このため、質の見極めが重要であると強調する。

AAPは新指針で、単なる時間制限ではなく、「どのコンテンツをどう使うか」を見極めることを家庭内でのデジタル利用管理の中心に据えるべきだと指摘する。例えば、保護者が子どもと一緒にデバイスを使い、どのようなコンテンツに興味を持っているかを理解し、対話を通じて利用の意図や感情を共有することが推奨されている。また、親自身が良好なデジタル習慣のモデルとなることの重要性も指摘される。

しかし、報告書は家族だけに負担をかけるべきではないと強調する。現代のデジタル体験は家族だけの努力で制御できるものではなく、プラットフォーム設計や政策の側でも改善が必要だという。AAPは未成年者へのターゲット広告の制限、プライバシー保護の強化、年齢確認の徹底など、立法者や技術企業が取り組むべき具体策を提示している。また、デジタルプラットフォームに対して、玩具や車両、食品と同様に安全基準を設けるべきだとの見解も示している。

報告書はさらに、図書館や公園、放課後プログラム、コミュニティスペースといったオフラインの活動や学習・交流の場を充実させることが、スクリーンから離れた健全な生活を支える上で重要だと述べる。「子どもが安全に遊び、学び、親と交流する基本的な要素が整えば、スクリーンの影響力は相対的に低下する」という見方だ。

AAPの新しいガイドラインは単なる時間制限からの脱却を促すものであり、子どもたちがデジタル世界を安全に利用するための包括的な戦略の必要性を訴えている。これにより、家庭だけでなく社会全体で子どもたちのデジタル体験を見直す機運が高まることが期待される。

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