◎米最高裁判事が公の場で政治の問題について発言することは極めて異例である。
2022年7月21日/イタリア、ローマで開催された宗教関連イベント、米最高裁のアリート判事(Notre Dame Law School/AP通信)

最高裁のアリート(Samuel Alito)判事は先週、米国の人工妊娠中絶の権利を覆した判決を擁護し、判決を批判した世界の指導者をあざ笑った

報道によると、アリート氏はローマで先週開催された宗教関連イベントに出席し、イギリスのジョンソン(Boris Johnson)首相やヘンリー王子(Prince Harry)などの批判を一蹴したという。

米最高裁は先月、1973年のロー対ウェイド裁判の判決を覆した。この判決により、全米のおよそ半分の州が中絶を禁止または制限すると予想されている。

▽ロー対ウェイド事件(1973年):最高裁は妊娠中絶を「合衆国憲法で保障される権利」と認め、堕胎禁止を初めて違憲と認めた。

アリート氏は2006年のブッシュ(George W Bush)政権時代に最高裁判事に就任した。同氏はイベントの中で、「ジョンソン首相は代償を支払った」とジョークを飛ばした。

またアリート氏は外国の指導者に米国の司法を批判する権利はないと述べた。「私は先月、歴史上唯一の判決を書くという栄誉を得ました。しかし、その判決は、合衆国憲法に何ら関係ない外国の指導者から非難されました...」

アリート氏はジョンソン氏が中絶の権利を擁護し、最高裁の判決を「民主主義の大きな後退」と呼んだことについて、「彼はその代表を支払わされた」とジョークを飛ばし、笑いを誘った。

ジョンソン氏は自身と保守党議員のスキャンダルを受け、9月に辞任する。「ジョンソンさんは米国の司法、米国の民主主義、合衆国憲法にいちゃもんをつけ、まもなく辞任します」

またアリート氏はマクロン(Emmanuel Macron)仏大統領、トルドー(Justin Trudeau)加首相、ヘンリー王子が今月初めに国連で行った演説についても言及した。

ヘンリー王子も最高裁の判決を「後退」と批判していた。

「私が本当に傷ついたのは、サセックス公爵(ヘンリー王子)が国連で演説した時です。彼はロシアのウクライナ侵攻と判決を比較しているように見えました」

アリート氏がローマで演説したことは公表されていなかったが、イベントを主催したノートルダム大学が28日遅くにその映像を公開したことで明らかになった。

アリート氏は演説の中で信教の自由に触れ、「権力を握ろうとする者たちは宗教を危険と考えている」と語った。

米最高裁判事が公の場で政治の問題について発言することは極めて異例である。

民主党の急進左派、オカシオコルテス(Alexandria Ocasio-Cortez)下院議員は29日、「最高裁判事の政治的な発言を警戒すべきだ」とツイートした。「最高裁は危機に陥っています...」

一方、リベラル派のケーガン(Elena Kagan)米最高裁判事は29日、「保守判事が有権者の信頼を失えば、米国の民主主義は危機にさらされる」と警告した。

ケーガン氏はモンタナ州で開催された会議で次のように述べた。「特定の判決について話しているわけではないが、最高裁が国民の信頼、国民の感情とのつながりを失ってしまったら、それは民主主義にとって危険なことだ」

主要メディアの世論調査によると、最高裁に対する信頼はかつてないほど低くなっており、信頼を寄せていると回答した人はわずか25%だった。

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