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米国で移民取り締まり巡る論争激化、分断進む、各地で訴訟に

背景には、ミネソタ州ミネアポリスでの移民税関捜査局(ICE)の取り締まりをめぐる一連の事件があり、特にICE捜査官による女性死射殺がきっかけとなっている。
2026年1月11日/米テネシー州ナッシュビル、移民税関捜査局(ICE)の取り締まりに抗議するデモ(AP通信)

米国で移民の取り締まりをめぐる論争が激化し、各州議会で執行に関する法案が相次いで提出されている。背景には、ミネソタ州ミネアポリスでの移民税関捜査局(ICE)の取り締まりをめぐる一連の事件があり、特にICE捜査官による女性死射殺がきっかけとなっている。この事件は国内で大規模な抗議や政治的な対立を引き起こし、移民政策と州・連邦の権限をめぐる議論を再燃させている。

民主党が主導する州では、移民当局の権限を制限する動きが強まっている。ニューヨーク、カリフォルニア、オレゴン、ニュージャージーなどでは、ICE職員が学校や裁判所、病院に立ち入ることを制限したり、連邦捜査官による憲法違反の疑いに対して州や地方政府、個人が訴訟を起こせるようにする法案が提出されている。支持者は、こうした措置が市民の安全と基本的人権を守る上で不可欠だと主張している。

一方、共和党が多数を占める州では、連邦の移民執行を支持し、強化する法案が相次いでいる。テネシー州などでは、公共サービスの利用や教育機会、職業免許の取得に際し、居住資格の確認を義務付ける案を含む厳格な措置が提案されている。また、不法入国を犯罪として扱う法整備も検討されている。これらの動きはトランプ政権の意向とも一致しており、州と連邦の政策が左右で大きく分かれている実態を浮き彫りにしている。

州レベルでの対立は法的な戦いにも発展している。トランプ政権は連邦当局の執行を妨げる州法は違憲であるとして、カリフォルニア州やイリノイ州を相手取って訴訟を起こしている。一方で、ミネソタ州やイリノイ州などは、連邦政府による移民執行が州民の権利を侵害しているとして連邦政府を訴える構えだ。ミネソタ州とミネアポリス、セントポールは国土安全保障省(DHS)に対して訴訟を提起し、憲法違反や違法な行為の停止を求めている。

これらの法案と訴訟は、米国における移民政策をめぐる根本的な議論を反映している。支持派は秩序ある国境管理と公共の安全を強調する一方、反対派は人権侵害や人種的偏見の助長を懸念している。専門家らは、今後の裁判所の判断が州と連邦の権限の境界を再定義し、移民執行のあり方に長期的な影響を与える可能性があると指摘している。

こうした動きは、現在の米国社会における分断を象徴している。移民をめぐる論争は単なる政策の違いにとどまらず、州ごとの政治的価値観や法的枠組みの対立を浮き彫りにしており、今後も各州議会や裁判所での激しい議論が予想される。

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