「空からの物資投下」米国の刑務所がドローンによる脅威の増大に直面
関係者によると、ドローンの性能向上により、100マイル(約160キロ)以上離れた地点からも飛行可能となり、積載能力は50ポンド(約22キロ)から220ポンド(約100キロ)に及ぶ場合もあるという。
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米国の刑務所でドローンの脅威が深刻化している。近年、組織犯罪や麻薬カルテルが薬物や武器、携帯電話などの物資を刑務所敷地内に送り込むためにドローンを利用する事例が急増しており、矯正当局は対策の強化を求めている。
現地メディアによると、数年前にジョージア州のある州立刑務所にドローンが携帯電話を投下し、その端末を使って受刑者が米中西部の医療従事者に偽の法的通知を装った詐欺電話をかけ、50万ドル以上をだまし取る事件が発生したという。犯行には刑務所内部の受刑者と外部の共犯者が関与し、ドローンが重要な役割を果たしたとみられている。
ジョージア州矯正局の長官は、「この問題と戦う中で、毎日のように攻撃を受けている」と指摘。ドローンによる物資輸送が日常的に発生している現状を明かした。実際、同州の矯正当局は最近、月間で過去最多となる71件のドローン侵入を記録している。
捜査当局は取り締まりを進める過程でドローンを押収し、そのGPSデータを分析したところ、複数の刑務所周辺が飛行軌跡に現れたことから、全国的な密輸ネットワークの存在を突き止めた。この一連の捜査「スカイホーク作戦」では12月12日時点で150人以上が逮捕され、押収された不正物資の市場価値は700万ドルを超えたとされる。
関係者によると、ドローンの性能向上により、100マイル(約160キロ)以上離れた地点からも飛行可能となり、積載能力は50ポンド(約22キロ)から220ポンド(約100キロ)に及ぶ場合もあるという。このため、薬物や携帯電話だけでなく、重機器や危険物質の運搬も懸念されている。
矯正施設に対する空からの脅威は、単に受刑者への不正物資の供給にとどまらない。矯正協会はこれらの行為が犯罪組織による高度に組織化された活動であり、1回の飛行で1万ドルから5万ドルもの費用がかかる「商業的取引」として成立していると指摘する。
しかし、現在の制度下では矯正職員はドローンを自由に撃墜したり回収したりする権限を持たない。連邦航空局(FAA)の規定ではドローンは登録された航空機とみなされるためであり、刑務所側は検出する「権限」はあるものの、空中での排除や迎撃といった「対処権限」を持たない。このため、監視はできても実質的な阻止策が講じられずにいる。
こうした背景から矯正当局や関係団体は、刑務所に対してドローンを検出・追跡し、潜在的脅威を無効化する法的な権限を付与する「ミティゲーション権限」の付与を求める運動を進めている。超党派の議員らは2026年度国防予算法案にこの権限を含めることを検討しており、刑務所の空域安全対策を強化する歴史的な一歩となる可能性がある。
矯正当局はドローンによる侵入が「切迫した、進行中の脅威」であると強調しており、対策の強化と法整備が求められている。
