インターネット検索データを活用する捜査手法に懸念高まる 米国
捜査当局は容疑者の手がかりが乏しい事件で、特定の検索語句を入力したユーザーの情報をIT大手グーグルに開示させる「リバースキーワード」令状の発行を求めるケースを増やしている。
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米国の捜査機関が被疑者の特定にインターネット検索データを活用する新たな手法を強める中、個人のプライバシー保護に対する懸念が高まっている。捜査当局は容疑者の手がかりが乏しい事件で、特定の検索語句を入力したユーザーの情報をIT大手グーグルに開示させる「リバースキーワード」令状の発行を求めるケースを増やしている。従来の令状が既に疑わしい人物や場所を対象とするのに対し、この手法は「特定の語句を検索した者」を幅広く洗い出すものであり、無実の人々のプライバシーを侵害しかねないとの批判がある。
リバースキーワード令状は、ある期間内に特定の語句を検索したIPアドレスなどの情報を法執行機関に開示させるもので、具体例としてテキサス州での爆発事件やコロラド州の放火事件、ブラジルの政治家暗殺事件でも活用された。令状は、事件現場の住所や爆弾に関連する語句など、具体性のある検索語を基に求められることが多い。インターネット検索が日常生活で広く利用されているため、捜査当局にとって事件解決の手掛かりとして潜在的価値があるとされる。
一方で、この手法は合衆国憲法修正第4条が保障する過度に広範な捜索に対する保護を損なう可能性があるとして、民間団体から強い反発を招いている。米自由人権協会(ACLU)などの団体は連邦最高裁判所に提出した意見書で、捜査機関が「数え切れないほどの人々の思考や関心、秘密に無制限にアクセスする」危険性を指摘した。
この問題はペンシルベニア州地裁がある強姦事件の捜査でリバースキーワード令状の有効性を支持した判決でも浮き彫りになった。2016年、同州ミルトン近郊で女性が暴行を受けた事件で、捜査当局は被害者の氏名や住所を検索したアカウントの情報開示を求めた。グーグルは事件当日の数時間前に被害者住所を検索した2つのアカウントを特定し、そのIPアドレスから捜査対象を絞り込んだ結果、州立刑務所の警備員の自宅を割り出した。監視の末に警備員の捨てたタバコの吸い殻から得たDNAが被害者のものと一致し、取り調べの結果、5件の暴行事件を自白。2020年に有罪判決を受け、長期の服役を命じられた。弁護側は令状の取得に十分な根拠がなかったと主張、最終的に州裁判所は令状は適法だったと結論付けた。
裁判所の判断は分かれており、3人の判事は検索行為にプライバシーを期待すべきではないとした一方で、別の3人は捜査側に相当な根拠があったとした。しかし反対意見を示した判事は、容疑者が検索したと仮定するだけでは「根拠ある合理的疑い」とは言えないと指摘した。弁護側も「単なる当て推量だった」と認めている。
捜査当局はこの令状が特定性の高い検索語に限定される場合に極めて有効だと述べる。また、例えば独特の名前や住所といった検索語は対象を絞り込みやすいと説明している。
専門家はこのような捜査手法が今後AI技術の発展とデジタル追跡の進展と共に拡大する可能性を懸念している。多くの人々にとって、検索履歴は健康問題や政治信条、財務状況といった極めて個人的な事柄を含んでおり、その保護が求められている。グーグルは法的要求に応じる際、プライバシー保護を重視し、過度な要求には異議を唱える方針を発表しているが、捜査と個人の基本的人権のバランスを巡る議論は今後も続く見込みである。
