◎オバマケア(アフォーダブルケア法/ACA)が共和党の挑戦を乗り越えたのは2010年以来3度目。
6月17日、米最高裁判所は数千万の米国民に安価な保険を提供したオバマケア(アフォーダブルケア法/ACA)に対する異議申し立てを却下した。
裁判官は異議を申し立てたテキサス州、共和党が主導する17州、および2人の個人に連邦裁判所に訴訟を起こす法的根拠はないと判断した。これにより、今回の申し立てに基づきACAの主要な規定が違憲かどうかを審理することはなくなった。
ACAが共和党の挑戦を乗り越えたのは2010年以来3度目。
ACAは数百万の低所得層に医療保険にアクセスできる権利を提供した。ホワイトハウスは今月、約3,100万人がACAの下で医療保険に加入したと述べた。
<オバマケアの要点>
・国民皆保険ではない。
・健康保険に加入していない個人に確定申告時に罰金を課すことで、今まで加入をためらっていた階層に加入を促した。罰金額は2017年に0ドルに改正されている。
・同じ年齢および同じ居住地区であれば、全ての被保険者に同等の保険料を設定しなければならない。また、年齢や以前の健康状況で保険に差をつけることは禁止されている。ただし、喫煙者は除外。
・低所得者には補助金を給付できる条項が定められている。
・個人や小規模事業者は医療保険取引所で保険内容を比較し、政府の補助を受けたうえで自分に合った保険を購入できるようになった。
・低所得層(政府が定める貧困ライン収入の100~400%)は医療保険取引所での購入時に補助金が支給される。小規模事業者も補助金の対象。追加の税額控除なども定められている。
・メディケイド(医療保険に加入することが難しい低所得層、所得保障の受給者である障害者、妊婦などを対象とした政府の医療給付制度)の資格上限が貧困ラインの133%に拡大された。
・メディケイドの支払い制度が出来高払いから包括払い制度に変更され、医療機関はより一層経営努力を求められるようになった。
経営層のドナルド・トランプ前大統領および共和党が支配するテキサス州の保守派グループは、低所得層のために施行されたオバマケアを打倒しようとしたが、裁判官は7対2で今回の訴えも却下した。
ジョー・バイデン大統領はツイッターに「ACAはアメリカの法律です」と投稿し、判決に敬意を表した。
裁判官は「個人の義務」と呼ばれているACAの要件を支持した。これは、健康保険に加入していない個人に課されていた罰金で、2017年に共和党主導の議会で0ドルに改正された。
訴訟に関与したテキサス州を含む18州は、罰金の撤廃により法律は違憲になると主張した。
最高裁判所で最もリベラルな裁判官、スティーブン・ブレイヤー判事は、「訴えを起こした州と人々は、法が保障する最低限の補償条項を攻撃する意義や必要性を明確に示さなかった」と述べた。
別の判事は、「手頃な価格のオバマケアが深刻な脅威に直面しています」と述べた。「裁判所はありそうもない訴えを却下します」
ACAはバイデン政権下で拡大されつつある。今年公布されたコロナ救済法(約1.9兆ドル)はACAの保険市場を通じて提供される補助金を大幅に増やし、同時に、メディケイド拡大を拒否した12の州により高い連邦支払いを命じた。
バイデン大統領は17日の声明で判決を称賛し、「ACAから恩恵を受けているすべてのアメリカ人にとっての大きな勝利」と述べたうえで、政権公約の柱のひとつであるACAの強化に突き進むと誓約した。「この画期的な法律をベースとする新たな医療制度を構築する時が来ました...」
オバマ前大統領も判決を歓迎した。
一方、テキサス州の共和党員、ケビン・ブレイディ議員は「判決に失望した」とツイートした。「欠陥のある法律を救った最高裁判所にウンザリしています...」
主に共和党の富裕層および健康な者は、ACAは社会化された費用のかかる医療制度と見なしており、国民の負担は増加するが、医療の質は低下すると主張している。また、医療を必要とする人が増えると全体の負担が増加することも支持されない要因のひとつになっている。
民主党のバーニー・サンダース上院議員を含む進歩的な民主党員はACAを劇的に進化させ、国民皆保険にすることを目指している。