米国の低所得者向け食費補助制度SNAP、数百万人が給付喪失の危機
SNAPは低所得世帯などに食料品購入の支援を行う連邦プログラムで、約4200万人の米国人が利用しているとされるが、今回の改定により制度の対象となる条件が大きく変わる。
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2026年2月1日から、米国の低所得者向けの食費補助制度であるSNAP(Supplemental Nutrition Assistance Program)の新たな就労要件が施行され、多くの受給者が給付を失うリスクに直面している。SNAPは低所得世帯などに食料品購入の支援を行う連邦プログラムで、約4200万人の米国人が利用しているとされるが、今回の改定により制度の対象となる条件が大きく変わる。
改定は2025年7月に成立した「ひとつの大きく美しい法」に基づくもので、受給が可能な期間や就労義務の対象が拡大された。新たな規定では、18歳から64歳までの自立可能な成人は、月80時間以上の就労、職業訓練、またはボランティア活動に従事することが求められるようになった。これまでの上限年齢は54歳だったが、今回はこれを64歳まで引き上げて適用対象を拡大した点が大きな変更だ。
また、子どもがいる家庭の免除条件も厳しくなった。以前は18歳未満の子どもがいる世帯の大人は就労要件が免除されていたが、新制度では14歳未満の子どもを養う成人のみが免除の対象となる。従来は免除されていたホームレス状態の人、退役軍人、養護施設を出た若者も新たな就労要件の対象となり、幅広い層に影響が及ぶ可能性が高い。
この変更によって、受給者は36カ月のうち3カ月だけは就労要件を満たさなくても給付を受けられるが、それを超えると給付が停止される。給付を失った人は、再び給付を受けるには30日連続で就労要件を満たす必要がある。こうした厳格化により、就労機会が限られる地域や高齢者、障がいを抱える人などは給付を継続することが困難になるとの指摘が出ている。
議会予算局(CBO)が2025年8月に発表した推計では、2025─34年の10年間で約110万人がSNAPの給付を失う可能性がある。このうち、家族のいない18歳から64歳の自立可能な成人が約80万人、14歳以上の子どもを持つ世帯の親や介護者が約30万人と見積もられている。さらに、別に100万人が就労要件の免除があった場合でも対象外となり、給付喪失のリスクがあるとされている。
非営利団体ハンガー・フリー・アメリカは「無数の人々が不必要に給付から外れることになるだろう。必要な食糧を失い、多くの家庭が困窮する」と述べ、フードバンクや食料パントリーが需要増に対応しきれない可能性を懸念している。特にホームレスや退役軍人、若年層など、就労や書類対応が困難な層は深刻な影響を受ける恐れがあると指摘している。
支持者側は就労要件が不正受給の防止や労働市場への参加促進につながると主張している。農務省食糧・栄養局は、SNAPは長期的な支援ではなく一時的な支援であるべきだとし、経済状況の改善や高賃金の職場への移行を促す政策だと説明している。
一方、反対派らは、この制度変更が生活困難層への支援削減につながると警告している。厳格な就労要件は失業率が高い地域や体調不良、介護責任のある人にとって達成困難な条件であり、結果として栄養不安や健康問題を引き起こす可能性があるとの懸念も示されている。今回の改定が実際にどの程度の影響を及ぼすかは今後のデータで明らかになるが、広範な議論が続くことは確実だ。
