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米国の新たな食事ガイドライン、タンパク質摂取量を倍増するよう提言

新指針では体重1キログラム当たり1.2~1.6グラムのたんぱく質を毎日摂取することを勧め、成人では1日最低100グラムのたんぱく質を確保し、その半分以上を動物性食品、例えば赤身肉や全脂牛乳などから摂るよう強調している。
肉を食べる女性(Getty Images)

保健福祉省は今年、2025~2030年の新たな「食事ガイドライン」を公表し、成人のたんぱく質摂取量を従来の目安の最大2倍へ引き上げることを推奨した。新指針では体重1キログラム当たり1.2~1.6グラムのたんぱく質を毎日摂取することを勧め、成人では1日最低100グラムのたんぱく質を確保し、その半分以上を動物性食品、例えば赤身肉や全脂牛乳などから摂るよう強調している。これは従来の0.8グラム/キログラムという基準から大幅に上昇した値であり、ケネディ・ジュニア(Robert F. Kennedy Jr.)保健福祉長官は「たんぱく質に関する戦いに終止符を打つ」と強調した。

新たなガイドラインは従来の欠乏症予防を目的とする最低必要量を超え、筋肉量の維持や代謝機能の最適化を意図した科学的レビューに基づくと説明している。同省が引用した30件の研究では、高たんぱく質食が体重管理や栄養の充足に寄与する可能性が示されており、「これまでの指針以上のたんぱく質摂取は健康的で安全」と結論づけられたとしている。

しかし、この新方針に対して多くの栄養専門家から慎重な声が上がっている。米国人の平均的な成人男性はすでに1日に約100グラムのたんぱく質を摂取しており、従来基準の2倍に相当すると指摘される。専門家は、”十分な筋力トレーニングを行っている人”を除いて、一般の人々がこの増量を必要としていない可能性が高いと警告する。過剰なたんぱく質は肝臓で脂肪に変換されることがあり、腹部に危険な脂肪が蓄積しやすくなり、糖尿病リスクが高まるといった健康上の懸念が指摘されている。

また、栄養専門家の間では新指針がかえって誤解を招き、食の質を損なう恐れを懸念する声も出ている。スタンフォード大学の研究者らは、たんぱく質強化をうたう加工食品やスナック類の販売が増え、消費者が「高たんぱく=健康」という単純なメッセージに惑わされる可能性を指摘する。これらの製品は必ずしも栄養価が高いとは限らず、全体の食生活の質を低下させるリスクがあるとする意見もある。

一方で、新ガイドラインには”加工された炭水化物”を減らし、未加工・全粒の食品を増やすというメッセージも含まれており、たんぱく質摂取の増加がこの目標達成につながる可能性もあるとの指摘もある。従来の食事ガイドラインが「リアルフード(本物の食品)」の摂取を強調していた点を踏襲しつつも、たんぱく質重視の傾向は従来の栄養指導とは一線を画している。

こうした背景には、米国内での健康・栄養政策に対する政治的・社会的な議論も影響しているとみられ、環境負荷や食品産業への影響を懸念する専門家からは、動物性たんぱく質の強調が持続可能性の観点から適切かどうかといった批判も出ている。ガイドラインは国民の健康促進を目的としているが、科学的根拠や実生活への適用については依然として意見が分かれており、一般消費者にどのように受け止められるかが今後の課題となっている。

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