◎米上院は2021国防授権法案(NDAA)を賛成多数で可決し、トランプ大統領の拒否権を却下した。
◎トランプ大統領はNDAAにセクション230の廃止(オンライン責任保護の完全廃止)が含まれていないことに不満を示していた。
2020年12月12日 AP通信/ワシントンD.C.ホワイトハウス、トランプ大統領

2021年1月1日、米上院は2021国防授権法案(NDAA)を賛成多数で可決し、トランプ大統領の拒否権を却下した。(賛成81ー反対13)トランプ大統領の拒否権が却下されたのは初めて。

一方、COVID-19経済救済法(第2弾)の直接支給600ドルを2,000ドルにアップグレードする「CASH法案」は停滞を余儀なくされている。

ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによると、アメリカのコロナウイルス新規陽性者数は1月1日時点で2,000万人を突破、累計死亡者は34.6万人。大晦日の新規陽性者数は230,982件だった。

昨年末、上下両院は国家の安全保障に欠かすことのできない7,405億ドル(約76.5兆円)の予算を可決した。

これに対し、まもなく退任するトランプ大統領はNDAAを「非常に弱く共和党員は反対を望んでいる」と非難し、拒否した。

上院軍事委員会を率いるジェームズ・インホーフ上院議員は声明で、「NDAAは必要不可欠な法」と述べた。

ジェームズ・インホーフ上院議員:
軍の予算と関係のない問題をクリアするためにNDAAが脅かされた。国家の安全保障を担う軍人とその家族に危害を加える者がいる、と私は信じたくない」

「トランプ大統領の反対には失望した」

2021年1月1日 ロイター通信/ワシントンD.C.キャピトルヒル、ミッチ・マコーネル上院院内総務

トランプ大統領はNDAAにセクション230の廃止(オンライン責任保護の完全廃止)が含まれていないことに不満を示していた。

12月27日、COVID-19経済救済法(第2弾)に署名したトランプ大統領は、「1人2,000ドルの直接支給(CASH法案)」「セクション230の廃止」「大統領選挙の完全性の検討」を求め、この3つを速やかに検討するよう議会に命じた。

共和党のミッチ・マコーネル上院院内総務は、トランプ大統領の3つの指示を1つにまとめた「新CASH法案」を提出したが、成立は極めて難しいと考えられている。

民主党のバーニー・サンダース上院議員はマコーネル氏に対し、「1人2,000ドルの直接支給を速やかに認めない限り、NDAAの投票には応じない」と脅迫した。しかし、この「時間稼ぎ」もマコーネル氏には通用しなかった。

武装サービス委員会のティム・ケイン上院議員(民主党)は声明で、「国家安全保障に必要なNDAAは60年連続で可決された」と述べた。

ティム・ケイン上院議員:
議会はトランプの邪魔を許可しない。超党派の最優先事項のひとつが法律になることに心から安心した」

民主党のナンシー・ペロシ下院議長は、「トランプはアメリカの軍事および国家安全保障に無謀な攻撃を仕掛けたが、議会はこれを打ち負かした」と述べた。

2020年12月30日 EPA/ワシントンD.C.キャピトルヒル、ミッチ・マコーネル上院院内総務

CASH法案

CASH法案:COVID-19経済救済法の直接支給「1人600ドル」を2,000ドルに増額する
2020年12月28日、下院通過

2020年????、上院通過

2020年????、トランプ大統領署名

COVID-19経済救済法:9,000億ドル
2020年12月20日、上下両院の指導者が合意に達する

2020年12月21日、下院通過

2020年12月21日、上院通過

2020年12月27日、トランプ大統領署名

・コロナ援助、救済、および経済安全保障法(CARES法):2.2兆ドル(230兆円)
2019年7月下院通過

2020年3月25日上院通過

2020年3月27日下院、上院の修正に同意

2020年3月27日トランプ大統領署名

COVID-19経済救済法の予算内訳
(赤字はCASH法案が成立した場合)

大人と子供1人あたり最大600ドルの直接支払い
・大人と子供1人あたり最大2,000ドルの直接支払い

・中小企業への支援 ペイチェック保護プログラム(PPP):2840億ドル以上

・ライブ会場、独立した映画館、文化施設などへの支援:150億ドル

・失業手当:週300ドル

・立ち退きモラトリアム延長:250億ドル

・学校や大学などの教育機関への支援:820億ドル

・育児支援:100億ドル

・栄養支援プログラム:130億ドル

・リモート接続およびブロードバンドアクセス強化:70億ドル

・コロナウイルスワクチンの輸送費:80億ドル

・コロナウイルスワクチンの接種費用(市民への無料配布):200億ドル

・航空業界への支援:450億ドル
(空港に20億ドル、アムトラックに10億ドル、航空会社に160億ドル、その他)

・有給の病気休暇を提供する雇用主への支援:税額控除

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