◎フェンタニルは2ミリグラム服用しただけで死に至る可能性があり、その効果はモルヒネの100倍といわれている。
オピオイド系鎮痛剤のフェンタニルの錠剤(Getty Images)

メキシコ国内におけるフェンタニルの押収量が激減している。原因は不明だ。

メキシコ国防省が9日に公開した報告書によると、今年1~6月の間に全国で押収されたフェンタニルはわずか130キログラムで、23年同期間の2329キロから94%も減少したという。

フェンタニルは2ミリグラム服用しただけで死に至る可能性があり、その効果はモルヒネの100倍といわれている。

メキシコの薬局で販売されているオピオイド系鎮痛剤オキシコンチン、パニック障害治療薬ザナックス、アデラルなどにはしばしばフェンタニルが混入している。

麻薬カルテルは中国やインドから合成オピオイドの前駆体化学物質を輸入。国内で加工し、米国などに密輸してきた。

専門家によると、メキシコで流通するフェンタニルの量は米国に流れる量の3割程度と推定されている。米国内では年間約7万人がフェンタニルの過剰摂取で死亡している。

米当局はメキシコ国境の警備を強化し、麻薬の流入を防ごうとしているが、効果は道半ばだ。

メキシコの陸軍、州兵、国境警備隊はフェンタニルより国内で広く消費されているメタンフェタミンの押収に力を入れているのかもしれない。

メタンフェタミン(俗称メス、スピード、チョークなど)はアンフェタミンより依存性が強く、簡単に作ることができるため、アヘンやヘロインに取って代わり、東南アジア・中東・西欧の主要な違法薬物となった。

メキシコ国防省によると、昨年同国内で押収されたメスは400トンを超え、過去最高を更新。22年の12倍超に激増した。24年上半期の押収量は168トンとなっている。

メキシコ産メスは米国に広く輸出され、社会問題になっている。メキシコ国内でもメスが全国に拡散。数十万人が麻薬中毒になり、病院や専門のクリニックで治療を受けている。

メキシコ国防省は2つの麻薬の押収量がこれほど劇的に変化した理由を説明していない。

メスの押収量が激増しているのは世界最大の麻薬組織シナロア・カルテルの複数の派閥による内部抗争が原因という見方もある。

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