◎昨年のトランプ弾劾裁判で賛成に票を投じた共和党員10人全員がトランプ派の猛攻に直面した。
米ワイオミング州で16日、11月の中間選挙の共和党候補を選ぶ予備選が行われ、トランプ(Donald Trump)前大統領を厳しく批判してきた現職のチェイニー(Liz Cheney)下院議員がトランプ派候補に大敗を喫した。
トランプ派候補のヘイグマン(Harriet Hageman)氏はアメリカ・ファーストと2020大統領選は盗まれたという主張を繰り返し、有権者から圧倒的な支持を得た。
チェイニー氏はディック・チェイニー(Dick Cheney)元副大統領の娘で、下院議員を3期務め、初当選時は「共和党の新星」と呼ばれていた。また、昨年1月6日の議事堂襲撃事件を調査する委員会では共和党委員を務めている。
昨年のトランプ弾劾裁判で賛成に票を投じた共和党員10人全員がトランプ派の猛攻に直面した。
10人のうち4人は引退し、今年の予備選に立候補ワイオミング州、ワシントン州、ミシガン州、サウスカロライナ州の議員4人がトランプ派候補に敗れた。2人は何とか勝利している。
ワイオミング州はいわゆる「赤の州」であり、2020年大統領選では有権者の7割がトランプ氏に投票した。
最新の世論調査でも「大統領選は盗まれた」と主張するヘイグマン氏がチェイニー氏に大差をつけ勝利すると予想されていた。
主要メディアの開票速報によると、ヘイグマン氏はチェイニー氏に30%以上の差をつけている。ほとんどのメディアが開票後まもなく、ヘイグマン氏に軍配が上がったと報じた。
チェイニー氏は16日、敗北を認めたうえで、トランプ氏への批判を緩めるつもりはなかったと述べた。「1月6日の事件以来、私はドナルド・トランプが二度と大統領執務室に近づかないようにするために必要なことは何でもすると言ってきましたが、それは本当です」
チェイニー氏は「選挙は盗まれたという主張に従えば簡単に勝利できただろう」と述べ、「従うという選択肢はなかった」と強調した。
トランプ氏は自身のSNSプラットフォーム「Truth Social」に声明を投稿。ヘイグマン氏の勝利を祝い、チェイニー氏を批判した。「リズ・チェイニーは自分の行動、そして他人に対する唾棄すべき、聖人ぶっている言動を恥じるべきです」
またトランプ氏はチェイニー氏が政界から消えることに満足していると語った。「彼女が忘却の彼方へ消えさることに満足しています」
ヘイグマン氏は勝利演説で「有権者はエリートに警告を発した」と語った。「私たち共和党員は政治エリートに警告を発したのです。私たちを、トランプ氏を支持しない者に居場所はありません!」
ワイオミング州キャスパーのロデオ会場ではヘイグマン氏の勝利を祝うロデオ大会が開催された。
オデオゲームに騎乗した男性有権者はAP通信の取材に対し、「リズ・チェイニーは大衆に逆らった」と語った。「共和党有権者に逆らった共和党議員に票を入れる共和党有権者がいますか?いるわけない!」
カウボーイハットをかぶった女性は、「私はディック・チェイニーを愛しているが、彼女はやり過ぎた」と語った。「私たちの大統領に逆らった女は落選しました」
チェイニー元副大統領は左派の憎まれ役として人気を博し、今でも共和党有権者から圧倒的な支持を得ている。
しかし、娘の選挙運動でその力を発揮することはできなかったようだ。チェイニー氏は娘の選挙広告でトランプ氏を米国最大の脅威と評し、批判していた。
一部の地区ではチェイニー氏を支持する一部の民主党有権者がわざわざ共和党に登録替えしたと伝えられている。
ABCニュースの取材に応じた女性は、「チェイニー議員の発言に賛成したことはほとんどないが、民主主義を重んじる姿勢は支持している」と語った。
別の男性は、「私は民主党員だが、チェイニー議員に投票した」と語った。「彼女は真実を追求できる議員だからです」
メディアがワイオミング州の予備選にここまで注目することはほとんどない。最近の予備選と本選はチェイニー氏が圧勝していた。
インフレに悩まされているバイデン(Joe Biden)大統領は11月の中間選挙で窮地に追い込まれる可能性がある。最新の世論調査によると、民主党は上院だけでなく下院でも過半数を失う可能性がある。