2025年の米国経済「奇妙・不思議・AI」矛盾した結果に
経済成長は堅調に進んだにもかかわらず、雇用の伸びは鈍く、インフレ率は目標を上回り、失業率は上昇するなど矛盾した結果となった。
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2025年の米国経済は成長と雇用、物価の動向が複雑に絡み合い、「不思議な」様相を呈した。経済成長は堅調に進んだにもかかわらず、雇用の伸びは鈍く、インフレ率は目標を上回り、失業率は上昇するなど矛盾した結果となった。このため、2026年の経済見通しには多くの不確実性が残されている。
政府統計の収集と公表が6週間にわたる政府機関の閉鎖で遅れたこともあり、連邦準備制度理事会(FRB)をはじめとする政策担当者は2025年末の経済状況を正確に把握することが難しい状態になっている。アナリストたちは、「2026年初頭は、2025年がどのように終わったかを判断するのが難しい時期」と指摘している。
成長率は年初は低調だったが、個人消費が堅調に推移したことを背景に第3四半期(7〜9月)には年率4.3%の伸びを記録した。これは予想を上回る数字で、過去2年間で最大の成長率となった。ただし、この成長は主に高所得層による支出がけん引したもので、経済全体の底力を反映しているとは言い難い点が指摘されている。
一方で雇用情勢は弱さを露呈した。2025年はトランプ(Donald Trump)大統領が発表した大規模な関税措置が企業の不透明感を高め、多くの企業が採用を控える動きにつながった。結果として6月、8月、10月にはむしろ雇用が減少し、11月の失業率は4.6%にまで上昇した。これは約4年ぶりの高水準である。企業による雇用は、官庁を除くと3カ月平均で1カ月当たり7万5000人の増加にとどまり、8月時点の1万3000人からは改善したものの、業種によるばらつきが大きい。特に民間の大規模産業では雇用が減少している。
この雇用の鈍化については、人工知能(AI)の導入が企業の採用判断を遅らせているとの見方もある。FRB理事は企業経営者から「AI、AI、AI…」という言葉を頻繁に聞くと語り、AIが新技術として現場に与える影響を見極めるまで採用を慎重にしているとの実態を明らかにした。
物価動向では、インフレ率がFRBの目標である2%を上回る状況が続いた。FRBが重視する物価指標では、2025年9月時点で年率2.8%となり、2024年末の2.7%からむしろ上昇した。11月には多少冷え込んだものの、これは政府閉鎖によってデータの収集が後半にずれ込み、年末の値下げセールが反映された可能性があると専門家は指摘している。
物価高は政治的な争点にもなった。バージニア州やニュージャージー州の知事選、ニューヨーク市長選などで物価の「手頃さ(affordability)」が争点となり、すべての選挙で民主党候補が勝利した。トランプ氏は物価高を「でっち上げ」と主張したものの、有権者の暮らしへの実感として強く影を落とした。
2026年の見通しについては専門家の間でも意見が分かれているものの、多くはインフレが徐々に落ち着き、FRBの目標に近づくとの予想を示している。また、トランプ政権の税制改革による大規模な税還付が家計の購買力を押し上げ、関税の不確実性が後退することで企業の採用が進む可能性も指摘されている。FRB理事は、2026年が「より良い年になるかもしれない」と楽観的な見方を示している。
こうした成長と雇用の不均衡、インフレ動向の複雑さは、2025年の「奇妙な経済」を象徴するものであり、2026年の政策判断と市場の反応が引き続き注目される。
