就学前教育で所得格差、自治体が支援も課題山積 米国
保護者が回答する「キンダーガーテン・レディネス(幼稚園入学準備)」の全国データでは、全体としては3分の2の子どもが入学準備が整っていると報告されているが、貧困家庭と裕福な家庭の間では準備状況におよそ20ポイントの差があることが示された。
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米国で幼稚園入学準備の状況に収入格差が大きく影響していることが、最新の国勢調査局による全国調査で明らかになった。保護者が回答する「キンダーガーテン・レディネス(幼稚園入学準備)」の全国データでは、全体としては3分の2の子どもが入学準備が整っていると報告されているが、貧困家庭と裕福な家庭の間では準備状況におよそ20ポイントの差があることが示された。低所得の子どもは高品質な初期教育や学習機会へのアクセスが限られ、長期的な学習成果に影響を及ぼしているとの分析がある。
幼児期の最初の5年間は、子どもの発達にとって極めて重要とされる時期であり、この基盤が将来の学校生活と学力形成に大きな影響を与える。だが、多くの低所得家庭の子どもは幼児教育の機会が乏しく、入学準備の格差は依然として解消されていない。調査では、この数年で貧困ライン未満の家庭の子どもの準備状況もわずかに改善しているものの、依然として格差が大きいことが確認された。
こうした格差是正に向けて、都市部を中心に自治体や州が幼児教育拡充に取り組んでいる。テキサス州サンアントニオが実施する「Pre-K 4 SA」はその代表例で、3歳と4歳児向けに約2000席の就学前プログラムを設け、対象家庭の約80%に無料で提供しているプログラムだ。市の税収を財源とし、2025年には乳幼児向け教室も新たに開設され、教育の幅を広げている。
Pre-K 4 SAは教育内容の充実にも力を入れている。社会性や情緒面の発達を含む「全人的アプローチ」を採用し、基礎的な読み書き・算数だけでなく、友だちとの関わり方や基本的な生活スキルの習得も重視しているという。サンアントニオ大学都市教育研究所の調査によると、このプログラムを修了した子どもたちは州平均を上回る3年生の数学・読解力の成績を示し、質の高い幼児教育が学力向上に寄与しているとの成果も出ている。
都市部の取り組みは他にも広がっている。デンバー、ニューヨーク、ボストン、シカゴなどでも市全体の幼児教育プログラムが設立され、低所得家庭の子どもが質の高い保育・教育にアクセスできるよう多様な支援が行われている。例えばデンバーのプログラムでは、全ての4歳児家庭に対して幼児教育の授業料クレジットを提供し、公立・私立問わず登録可能な仕組みを整え、子どもたちの学習機会を増やす工夫をしている。
一方で、これらの都市プログラムには需要が供給を大きく上回るという課題もあり、サンアントニオでは2025年度の時点で約1600世帯が待機リストに載っている。こうした家庭には地域の学区運営プログラムや提携する私立幼稚園への案内を行うなどの支援が進められているが、全国的にはまだ十分とは言えない状況だ。
専門家は幼稚園準備の格差を縮める鍵は、質の高い幼児教育への普遍的なアクセスの確保にあると指摘する。クラスの規模や教員比率といった教育の質自体を高めることが、所得に関係なく全ての子どもに公平なスタートを提供するために重要だという意見が出ている。
幼児期の教育機会の不平等は、子どもの将来の学力格差や社会経済的な格差につながる可能性が指摘されており、自治体や教育機関が連携してその解消に取り組む必要性が高まっている。
