米国2025年11月雇用6.4万人増、労働市場の停滞鮮明に
雇用増加数は市場予想を若干上回ったものの、今年を通じて続いてきた労働市場の停滞傾向が再び浮き彫りになった。
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米労働市場を示す最新の雇用統計が12月16日に発表され、11月の採用ペースが鈍化したことが明らかになった。雇用増加数は市場予想を若干上回ったものの、今年を通じて続いてきた労働市場の停滞傾向が再び浮き彫りになった。
労働省のデータによると、11月の非農業部門雇用者数は前月比で約6万4000人増となった。これはエコノミストの予想(約5万人)を上回る結果だったものの、9月の11万9000人増と比較すると大幅な減速を示している。併せて発表された失業率は4.6%に上昇し、2021年9月以来の高水準に達した。
雇用増加の内訳を見ると、ヘルスケア分野が約4万6000人、建設業が約2万8000人の雇用を創出し、全体の雇用増加を牽引した。一方で、製造業や運輸・倉庫業など一部の業種では雇用が減少しており、業種間で明確な差が認められた。
今回発表されたデータは通常の雇用統計と異なり、10月分の完全な失業率データは政府機関の閉鎖による影響で収集できなかったため、10月の雇用状況も併せて発表されている。10月は10万5000人の雇用減少が確認され、特に連邦政府部門での大規模な人員削減が影響した。
政府機関の部分閉鎖は43日間に及び、通常は月初に発表される雇用統計のリリーススケジュールを大幅に遅延させた。労働省はこの影響を受け、データ収集と処理の期間を延長し、11月分雇用統計を通常とは異なる中旬の発表とした。
こうした中、別の雇用データでは、11月の民間部門が約3万2000人の雇用喪失を計上し、とりわけ小規模企業での雇用削減が顕著であったと報告されている。小規模企業は約12万人の雇用を失い、中堅・大企業での雇用増加分を相殺した格好となった。この動きは労働市場全体の停滞感を補強するものとして注目されている。
連邦準備制度理事会(FRB)は今年に入って3度の利下げを実施しており、これは労働市場の弱さに対応するための措置とされる。しかし、今回の雇用統計の結果は労働市場の減速が依然として続いていることを示し、金融政策の今後の方向性に影響を与える可能性がある。FRBのパウエル(Jerome Powell)議長は労働市場の改善を見守る姿勢を示しているものの、追加利下げについては慎重な姿勢を崩していない。
専門家は雇用増加数の鈍化と失業率の上昇を受けて、消費者支出の減速や企業の投資意欲の低下が景気全体に波及するリスクを指摘している。特に小規模企業の雇用削減は経済全体の回復力にとって逆風となる可能性があるとの見方が出ている。今後の雇用統計や経済指標が米景気の先行き評価にとって重要な指標となることは確実である。
