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米ミシガン州のフードバンクに長蛇の列、物価高でトランプ離れも

全国的にはインフレ率は低下傾向にあり、11月時点では2.7%まで落ち着いているが、この数字は牛肉やコーヒー、オレンジジュースなどの生活必需品の価格上昇を反映しきれていないという指摘がある。
2025年12月21日/米ミシガン州カパックのフードバンク(ロイター通信)

ミシガン州の農村部でフードバンク(食料配給所)に長い車列ができる光景が日常化している。地元住民らは食品の価格高騰に苦しみ、今年の物価上昇が依然として生活を圧迫していると語る。この現状はトランプ(Donald Trump)大統領が掲げた「物価を下げる」という公約に基づき支持した有権者の間で不満を高めており、共和党の支持基盤への影響が懸念されている。

12月上旬のある朝、ミシガン州カパックの消防署を利用した臨時フードバンク前には、約30台の車が早朝から列をつくった。ボランティアらはレタスやリンゴといった食料品を袋詰めし、人々に配布した。35歳の女性は10歳未満の子ども3人を抱え、ピックアップトラックで午前10時の開場前から並んだ。昨年トランプ氏に投票した理由は「物価を下げてほしい」という期待からだったが、シリアルや果物、野菜といった基本的食品の価格が依然として高いままであると語った。

女性は物価高が改善しない場合、来年の中間選挙でトランプ支持を見直す可能性を示唆した。「ただ盲目的に支持し続けるつもりはない」と述べ、生活費の高騰に具体的な進展が見られなければ投票行動を変える考えを示した。彼女のような意見は同州東部セントクレア郡でトランプ支持者としてロイター通信の取材に応じた19人の有権者の中でも散見された。

全国的にはインフレ率は低下傾向にあり、11月時点では2.7%まで落ち着いているが、この数字は牛肉やコーヒー、オレンジジュースなどの生活必需品の価格上昇を反映しきれていないという指摘がある。こうした実感としての物価高が有権者の不満を強めている。トランプ政権はガソリン価格の低下などを成果として強調しているものの、食料や日用品のコスト上昇が多くの家庭を直撃している。

この地域では製造業や農業が主要な産業であるが、高賃金の職は限られており、多くの住民が生活費の負担に苦しんでいる。退職者や障がい者、低所得の労働者らが食品支援に頼る例も増えており、年金や社会保障だけでは家計を維持するのが難しい状況が浮き彫りになっている。元自動車整備士の男性は成人した孫たちのために食品を受け取りに来たと語り、「状況次第では民主党候補への投票も検討する」と述べた。

一方、専門家はトランプ氏の政策が短期間で物価に直接作用するのは難しいと指摘する。トランプ政権の輸入関税が物価を押し上げているとの見方もあり、経済政策の効果が評価されるには時間がかかるとの分析もある。民主党側は来年の中間選挙でインフレ問題を前面に押し出し、トランプ氏と結び付けて批判を強めている。

こうした状況はトランプ支持が根強い地域でも経済的な不満が政治的な支持に影を落としていることを示しており、中間選挙に向けて各党の戦略に影響を与える可能性がある。

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