炭水化物を「冷やす」ことでダイエット効果が得られる?
炭水化物を冷やすことは血糖値の急上昇を和らげるなどの前向きな影響を与える可能性があるものの、直接的なカロリー減少効果や確実な体重減少効果をもたらすとは限らない。
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近年、体重減少に苦戦している人々の間で、炭水化物を「冷やす」ことでダイエット効果が得られるとの説が広まっている。SNSや健康系インフルエンサーは炊いた米やパスタ、ジャガイモなどを一度冷やしてから再加熱することでカロリーを減らすことができると主張しているが、この考え方は単純なものではない。科学的な裏付けはあるものの、その効果や実用性には限界があるという。
この手法の根拠となっているのが「レトログラデーション」と呼ばれる現象だ。炭水化物に含まれるデンプンは消化しにくい「レジスタントスターチ(抵抗性でんぷん)」と、消化しやすいでんぷんの二種類に大別される。加熱によって抵抗性でんぷんは消化しやすい形に変わるが、調理後に冷やすと再び抵抗性の性質を帯び、この過程をレトログラデーションという。冷やした後に再加熱しても、この性質はある程度維持されるという。
この変化は消化速度や血糖値の上昇に影響を与える可能性があるとされている。抵抗性でんぷんが多い食品は通常よりも消化に時間がかかり、食後の血糖値の急上昇を抑える効果が観察された研究もある。実際、調理後に冷やした米を食べた人は、出来たての米を食べた人に比べて食後血糖値の上昇が抑えられたという報告が複数ある。こうした血糖値の安定は、過食を招くような強い空腹感やインスリンの急増を抑える可能性がある。
ただし、このプロセスが「カロリー自体を大幅に減らす」という証拠は乏しい。専門家は、冷やすことで含まれるカロリー量そのものが著しく減少するわけではないと指摘する。それによると、レトログラデーションはホルモンや代謝に影響を与え、カロリー管理を容易にする可能性はあるものの、劇的な減量効果を期待するのは現実的ではないという。
加えて、この方法の効果を日常的に活かすのは簡単ではないという指摘もある。ハーバード大学公衆衛生学教授のウォルター・ウィレット(Walter Willett)氏は、レトログラデーションの効果を得るには継続的に食品を冷やし続ける必要があり、多くの人にとって実行が難しい可能性があると述べた。また、冷やすことで失われた食物繊維やビタミン、ミネラルが戻るわけではなく、精製された炭水化物に含まれる栄養素自体の不足は補えないとも指摘されている。
専門家の間では、冷やす手法を取り入れることが完全に無意味というわけではないものの、基本的な食生活の改善や全粒穀物の摂取、バランスの取れた食事を心がけることが重要だとする意見が根強い。全粒粉製品や未精製の穀物はもともと食物繊維や栄養価が高く、血糖値のコントロールや体重管理に役立つ。したがって、冷やす手法をあくまで補助的な方法として活用しつつ、全体の食事内容を改善することがより効果的であるとの見方が一般的だ。
結論として、炭水化物を冷やすことは血糖値の急上昇を和らげるなどの前向きな影響を与える可能性があるものの、直接的なカロリー減少効果や確実な体重減少効果をもたらすとは限らない。減量を目指す場合は、カロリー摂取量全体の管理や栄養価の高い食品の選択を優先することが推奨されている。
