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米住宅市場「購入者に有利な環境...」イラン戦争が市場全体に影落とす


2月末の住宅在庫は前年同月比で約8%増加し、売り手よりも買い手の数が相対的に少ない状況が生じている。
売り家の看板(Getty Images)

米国の住宅市場では現在、住宅購入者に有利な環境が広がっている。一方で、イラン戦争の影響が拡大し、住宅ローン金利の先行きに不透明感をもたらしており、市場全体に影を落としている。

2026年春時点の住宅市場は在庫の増加が顕著である。2月末の住宅在庫は前年同月比で約8%増加し、売り手よりも買い手の数が相対的に少ない状況が生じている。住宅供給は需要を約46%上回り、この差は過去最大規模となった。こうした需給バランスの変化により、住宅購入者は価格交渉において優位に立ちやすくなっている。実際、多くの地域で住宅価格の下落や、売り手による値下げ、さらには修繕費負担や金利引き下げ支援といった譲歩が見られる。

また、物件が市場に出てから売却されるまでの期間も長期化しており、買い手にとっては慎重に比較検討する余地が広がっている。これまで過熱気味だった住宅市場は徐々に「売り手市場」から「買い手市場」へと移行しつつあるといえる。

しかし、こうした好材料にもかかわらず、住宅購入のハードルは依然として高い。住宅価格の中央値は約39万8000ドルと、世帯所得の約5倍に達し、多くの家族にとって大きな負担となっている。加えて、住宅ローン金利の上昇が購入意欲を抑制する要因となっている。

とりわけ影響が大きいのが、2月末に発生したイラン戦争である。戦争に伴うエネルギー価格の高騰はインフレ圧力を強め、米国債利回りの上昇を通じて住宅ローン金利を押し上げている。実際、30年固定型住宅ローン金利は一時6%を下回ったものの、直近では6.46%まで上昇し、約7カ月ぶりの高水準となった。

この金利上昇は購入者の月々の返済額を増加させる。中央値の住宅を購入する場合、戦争前と比べて月々の支払いが約100ドル増加し、長期的には数万ドル規模の負担増となる試算もある。こうした状況は、せっかく拡大しつつある買い手優位の市場環境を相殺しかねない。

さらに、戦争の長期化は住宅市場のみならず、経済全体に影響を及ぼす可能性が高い。原油輸送の要衝であるホルムズ海峡を巡る緊張はエネルギー価格のさらなる上昇やサプライチェーンの混乱を引き起こし、インフレ再燃や景気減速のリスクを高めている。こうした不確実性は消費者心理を冷やし、住宅購入の意思決定にも影響を与えうる。

一方で、現在の市場には一定の底堅さも見られる。住宅ローン金利は前年よりは低水準にあり、住宅価格も一部で下落傾向が続く中、購入を検討する動き自体は維持されている。春の需要期を迎え、今の金利水準のうちに購入を決断しようとする動きも確認されている。

総じてみれば、米住宅市場は供給増加と価格調整により、数年ぶりに買い手に有利な環境が整いつつある。しかし同時に、地政学リスクに起因する金利上昇と経済不安が、その恩恵を不安定なものにしている。今後の住宅市場の行方はインフレ動向や金融政策だけでなく、イラン情勢の推移にも大きく左右される局面に入っているといえる。

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