◎全米各地で判決に抗議するデモが行われている。
米主要メディアは24日、最高裁がロー対ウェイド裁判の判決を覆したことを受け、いくつかの州の中絶クリニックが閉鎖されたと報じた。
保守派が大多数を占める最高裁は24日、ミシシッピ州が起こしたロー対ウェイド裁判の判決を覆そうとする試みを支持した。
バイデン(Joe Biden)大統領は判決を「悲劇的な誤り」と呼び、深刻な懸念を表明した。
▽ロー対ウェイド事件(1973年):最高裁は妊娠中絶を「合衆国憲法で保障される権利」と認め、堕胎禁止を初めて違憲と認めた。
全米の約半数の州がこの判決を受け、人工妊娠中絶を制限または禁止する州法を導入すると予想されている。このうち13州はロー裁判の判決が覆された時点で中絶を禁止するトリガー法を施行していたため、中絶は即座に非合法化された。
全米各地で判決に抗議するデモが行われている。
一方、最高裁前に集まった中絶反対派は判決を称賛し、祝杯をあげた。
あるデモ隊は、「邪悪なクリニックに駆け込む者たちは逮捕される」と叫んだ。
保守系メディアの取材に応じた女性は、「共和党はロシアの大量虐殺と新生児の大量虐殺に反対します」と語った。「バイデンと民主党は新生児の虐殺を擁護しています...」
AP通信によると、トリガー法を施行していたルイジアナ州ニューオーリンズでは、州内に3つしかない中絶クリニックの1つが閉鎖を決め、スタッフに帰宅するよう促したという。
このクリニックのスタッフはAP通信に、「裕福な女性は他の州で適切な手術を受けられるが、貧しい女性は危険にさらされるだろう」と語った。このクリニックの周辺に集まった中絶反対派はスタッフに罵声を浴びせた。
人口中絶手術を行うNPO「プランド・ペアレントフッド(Planned Parenthood)」の調査によると、今回の最高裁判決により、全国で約3600万人の女性が自分の生活する州で中絶手術を受けられなくなるという。
ケンタッキー、ルイジアナ、アーカンソー、サウスダコタ、ミズーリ、オクラホマ、アラバマ州ではトリガー法が適用された。
ミシシッピ州とノースダコタ州の禁止令は州司法長官の承認後、発効する予定である。
ワイオミング州の禁止令は5日後に発効。ユタ州の禁止令は議会審議会の認定を受ける必要がある。
アイダホ州、テネシー州、テキサス州の禁止令は30日後に適用される。
最高裁前に集まった中絶反対派は歓喜の声を上げたが、ニューヨークやロサンゼルスを含む50都市以上で判決に対する抗議デモが行われる予定である。
米国は中絶問題に長年悩まされてきた。主要メディアが最近行った世論調査によると、回答者の約60%が中絶の合法化に賛成したという。
保守大国テキサス州サンアントニオの中絶反対派グループは、最高裁の判決に抗議するデモを阻止すると述べている。
このグループはCNNニュースの取材に対し、「すべての人間の命は保護されなければならない」と語った。「最高裁は生まれてくる子供の命と権利を認めたのです...」
一方、バイデン氏は「この判決は女性の健康と生命を危険にさらす」と懸念を表明した。「極端なイデオロギーが現実になったことを残念に思います。この判決は悲劇的な誤りです」
またバイデン氏は、「ピルや中絶薬を入手する権利を保護する」と約束した。
この判決は最高裁の以前の判決を根底から覆すものであり、極めて異例である。
西海岸のカリフォルニア州、ワシントン州、オレゴン州の各知事は判決を批判し、中絶を求める他州の患者を保護すると誓った。
ペンシルベニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州など中絶に対する意見が分かれている州では、選挙の結果が中絶の合法性を左右する可能性が高い。
また、州外に中絶手術を受けに行くことや、中絶薬を通販で販売することを許可するかどうかなど、新たな法廷闘争に発展する可能性がある。
一方、長年ロー判決を批判してきた敬虔なキリスト教徒のペンス(Mike Pence)前副大統領は、生命の尊厳がすべての州で保護されるまで、中絶反対運動を止めないよう促した。