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「EVに乗り換えるべきか...」米国でガソリン価格急騰、悩む市民


専門家はエネルギー安全保障の観点からも電動化と再生可能エネルギーの拡大が重要だと指摘する。
2026年3月11日/米イリノイ州リンカーンウッドの充電ステーション(AP通信)

中東情勢の緊張激化に伴い原油価格が上昇し、ガソリン価格が急騰している。こうした状況を背景に、米国では自動車利用者の間で電気自動車(EV)への乗り換えを検討する動きが広がっている。燃料価格の不安定さを避けられる可能性があるためだ。

米国のガソリン価格は急速に上昇している。米自動車協会(AAA)によると、レギュラーガソリンの全国平均価格は1ガロン3.57ドル(リッター0.94ドル)となり、1カ月前の2.94ドルから大きく上昇した。背景にはイランをめぐる戦争などによる原油供給の不安定化がある。こうした国際情勢は石油市場に直接影響するため、ガソリン車の利用者は価格変動の影響を受けやすいと指摘されている。

実際にEVに乗り換えた利用者からは、価格変動の影響を受けにくいという声が上がっている。ミシガン州デトロイト在住の大学教員ケビン・ケテルズ(Kevin Keteleer)さんは、26年型のEVを購入したことでガソリン価格の高騰を気にしなくて済むようになったと話す。ケテルズさんは「電気料金も上がる可能性はあるが、ガソリンほど急激に上昇することは少ない」と指摘する。

専門家も、ガソリン価格の高騰が続けばEVへの関心が高まる可能性があるとみている。カリフォルニア大学デービス校のエリック・ミューレガー(Erik Muehlheuser)教授は、家庭用電気料金は規制の影響を受けるためガソリンより変動が小さいと説明する。そのためEV利用者は石油価格の急騰の影響を比較的受けにくいとされる。

ただし、電気料金も完全に安定しているわけではない。近年はデータセンターの増加などにより電力需要が急増しており、電気料金は全米も上昇傾向にある。エネルギー政策専門家のホルト・エドワーズ(Holt Edwards)氏は、戦争によるインフレ圧力が電力価格にも一定の影響を与える可能性があると指摘する。

また、EVの電気料金は地域の電力構成によっても変わる。発電に使われるエネルギーは天然ガス、石炭、原子力、再生可能エネルギーなどさまざまであり、電源構成によってコストが左右される。米コロンビア大学のエネルギー専門家ピエルパオロ・カッツォーラ(Pierpaolo Cazzola)氏は、米国では電力価格の変動幅が石油ほど大きくないと説明している。

一方で、EVの普及には課題もある。新車のEVは依然として価格が高く、平均販売価格は約5万5300ドルで、ガソリン車を含む新車平均の約4万9350ドルより高い。初期費用の高さが購入の障壁になっていると専門家は指摘する。

それでも燃料費の節約効果は大きいとされる。環境団体によると、EVは政府の補助金がなくても車両の寿命全体で「数千ドル規模」の燃料費を節約できる可能性がある。ガソリン価格が上昇するほど、その節約効果はさらに大きくなるという。

調査会社エドマンズのデータでも、イラン紛争開始後の週にはハイブリッド車やプラグインハイブリッド、EVなど電動車への関心が高まり、自動車検索全体の約22%を占めた。燃料価格の上昇は消費者が車の選択を見直すきっかけになっている。

専門家はエネルギー安全保障の観点からも電動化と再生可能エネルギーの拡大が重要だと指摘する。戦争などによる石油価格の変動に左右されないエネルギー体制を築くことが、今後の経済や安全保障の安定につながるとの見方が広がっている。

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