被告側の主張
9月11日、「ジョージ・フロイド氏」を殺害した容疑で起訴された被告の弁護人は、同氏が4人の警察官と遭遇する前に薬物を摂取していたと主張した。
これに対しフロイド氏の家族および弁護士は、その主張を却下した。
起訴された4人のミネアポリス警察官は、フロイド氏が致命的な量のフェンタニル(合成オピオイド)を摂取しており、結果、暴力的に制圧せざるを得なかったと法廷で主張した。
一方、フロイド氏の家族を弁護するベン・クランプ氏は次のように述べた。
ベン・クランプ弁護士:
「映像データに残されている通り、被告人はジョージの首を膝で押さえつけ、窒息死させた」
「死者を愚弄する行為は許されない。ジョージは薬物など摂取しておらず、証拠もない」
「あの時、ジョージが過剰摂取したものは、ミネアポリスの警察官による暴力と人種差別である。彼は協力的だった。しかし、警察官たちは彼に暴行を加え、公衆の面前で処刑した」
「世界はジョージが警察官たちに処刑されるシーンを目撃した。しかし、被告人たちは被害者を薬物依存と主張している。徹底した検視が複数回行われた結果、彼の身体から薬物は検出されず、首を押さえつけられたことによる窒息死と判明しているにも関わらず」
クランプ氏は警察官および被告弁護人を厳しく非難し、世界に飛び火した「Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)」だけでなく、フロイド氏の「息をさせてほしい」という誰もが平等に得るべき権利を踏みにじったと断罪した。
「警察は人間の尊厳を踏みにじる。そして、自分たちの仲間を守るためならどんなことでもする。薬物摂取の主張は警察の古典的な防御方法だ。検視を行い、薬物摂取の疑いはないと判明しているにも関わらず、彼らはなぜ平気な顔で嘘をつくのか」とクランプ氏は述べた。
公判開始前。裁判所の前には、フロイド氏の家族およびクランプ弁護士の戦いを応援しに来た抗議者たちが200人以上集まり、怒りの声を上げた。
一部の者は、フロイド氏の死に関与した警察官およびミネアポリス警察を非難した。また、警察の残虐行為に反対する横断幕が掲げられ、抗議者たちは拳を天に向けて突き上げた。
抗議者たちの前に立ったフロイド氏の兄弟であるフィロニーズ・フロイド氏は、弟の処刑映像が家族を永遠に苦しめ続けると語った。
公判終了後、フロイド氏の殺害容疑で起訴された「デレク・ショービン容疑者」は、法執行官に付き添われ、裁判所の裏から車に乗り込んだ。
フィロニーズ氏は公判で明らかにされた司法制度の不平等を抗議者たちの前で語った。
フィロニーズ・フロイド氏:
「私たちは、大切な弟が警察官に殺される瞬間の映像を何度も何度も見なければならない。これ以上に苦しく辛い経験はない」
「今日、司法は警察官を守るために弟を薬物依存と決めつけ、私たちを激しく責め立てた。複数回におよぶ検視結果を無視する彼らの姿勢は、警察の隠蔽と捏造体質を証明している」
「司法制度は権威のある白人警察官だけを守る。我々ブラックは、彼らに銃撃されても泣き寝入りしなければならない」
クランプ弁護士は、警察官の残虐行為を容認し、黒人犠牲者に対してしばしば用いられる「否定的かつ根拠のない物語」しか語らない被告弁護人を非難した。
ジョージフロイドの死/公判開始
黒人vs警察組織
公判終了後、クランプ氏と共にフロイド氏の家族を弁護するアントニオ・ロマヌッチ弁護士は、元警察官たちの行動がミネアポリス警察の「不正にまみれた体質」をさらしたと語った。
アントニオ・ロマヌッチ弁護士:
「ジョージが呼吸できないと主張した時、警察官たちは彼の体調をチェックし、正常に呼吸できることを確認する義務があった。しかし、彼らは職務を放棄しただけでなく、公衆の面前で彼を処刑した」
「ジョージは息ができない、呼吸させてほしいと何度も主張し、死んだ。結果、元警察官たちは殺人容疑で逮捕され裁判所にいる。そして今日、彼らは罪を一切認めず、ジョージを薬物依存に仕立て上げようとした」
フロイド氏の家族は刑事告訴だけでなく、4人の処刑執行人(デレク・ショービン、トウ・タオ、トーマス・レーン、アレクサンドル・クエン)に対し民事訴訟を起こしている。
家族は、フロイド氏を拘束する際に不必要かつ過度な力が行使され、結果、被害者を死に至らしめたと主張し、これに伴う補償および、事件に関連する特別な損害賠償、そして、ミネアポリス市に対し、「警察官を適切に訓練および監督する」よう求めている。
先月、ショービン容疑者の弁護人は、クライアントに対する全ての告訴を取り下げるよう求めた。さらに、フロイド氏の死は薬物の過剰摂取によるものであり、被告人が膝で地面に押し付けたことが原因ではないとコメントした。
第二級殺人および過失致死罪の罪で起訴されたショービン容疑者は、「フロイド氏は薬物依存の犯罪者である」と述べ、無罪を求めた。
一方、トーマス・レーン容疑者およびアレクサンドル・クエン容疑者の弁護人は、ショービン容疑者の指示に従わざるを得なかったと主張している。
トウ・タオ容疑者の弁護を務めるボブ・ポーレ氏は、他の3人がフロイド氏を拘束している間、彼は首絞めには一切関与せず、車両の近くで第三者の動きに気を配っていたと主張した。
4人の判決は2021年3月に言い渡される予定である。
ミネアポリス警察はフロイド氏を巡る致命的な殺人事件への対策として、警察機構の改革を発表した。
現在、当局は移動中の車両への発砲を禁止しており、容疑者を逮捕する際には、可能な限り低いレベルの武力(テイザー銃など)を行使することにしている。
先月、ミネアポリス警察官僚のメダリア・アラドンド氏は記者団に対し以下のように述べた。
メダリア・アラドンド氏:
「私たちに課された使命の中で最も重い決断は、容疑者の命を奪うことである。私たちに与えられた武力は、警察官と全ての善良な市民を守るために使われねばならない」
「今回の改革により、フロイド氏が受けたレベルの過剰な暴力はなくなるだろう」
またアラドンド氏は、ミネアポリスの黒人コミュニティで警察官の活動に関する情報を収集したと述べ、「銃を使った不当な圧力」や「脅迫まがいの取り締まり」が過去にあったこと認めた。
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