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米CBS、エルサルバドル巨大刑務所の調査報道番組を延期

問題となったのは『60 Minutes』の特集「Inside CECOT」で、12月21日夜に放送される予定だった。
2025年3月26日/エルサルバドル、中部テコルカの刑務所(AP通信)

米国のCBSニュースが看板番組『60 Minutes』で予定していたエルサルバドルの巨大刑務所CECOT(テロリスト監禁センター、Centro de Confinamiento del Terrorismo)に関する調査報道を、放送直前になって延期した。CBS側は追加取材が必要であると説明しているが、この決定をめぐって社内外で批判が噴出している。

問題となったのは『60 Minutes』の特集「Inside CECOT」で、12月21日夜に放送される予定だった。番組は公式SNSやウェブサイトで放送予告を掲載していたが、放送予定の数時間前に「今夜の放送ラインアップを変更した」と告知し、「Inside CECOT」の延期が発表された。CBSニュースのスポークスパーソンは「追加取材が必要」とするコメントを出している。

この報道はCECOTの実態を明らかにする内容で、取材にあたっていた「60 Minutes」記者のシャリン・アルフォンシ(Sharyn Alfonsi)氏は、最近釈放された国外追放者へのインタビューを通じて同刑務所内の過酷な環境を伝える予定だった。報道予告には、そこでの「残酷かつ拷問的」な状況について語る元受刑者の証言が紹介されるとしていた。

CECOTは政府が治安対策の一環として開設した巨大な刑務施設で、トランプ米政権下で主にベネズエラ出身の移民が裁判なしに送られたとして国際的な注目を集めている。人権団体などからは、同施設における拘禁条件が国際基準に反するのではないかとの批判が出ており、今回の調査報道はその実態を検証するものとして期待されていた。

報道関係者の間では、放送延期を決めた背景にCBSニュース内の体制変化が影響しているのではないかとの見方も出ている。今年10月、CBSニュースの編集責任者としてバリ・ワイス(Bari Weiss)氏が就任したが、同氏はテレビニュースの編集管理経験がなく、CBSの親会社であるパラマウント・スカイダンスが買収した自身のメディア企業出身だとして物議を醸していた。ワイス体制下で番組編成や幹部人事の変更が進む中、今回の放送中止に対し編集方針や報道の独立性への懸念が高まっている。

CBS内部からは特集がすでに法務・編集基準を通過しており、政治的な意図で放送が取りやめられたのではないかとする批判的な声も出ている。これらの批判者は報道機関の独立性や調査報道の自由が損なわれる可能性を指摘しており、今回の決定に対する内部反発が続いている。

CBSは追加取材を行った上で「Inside CECOT」を改めて放送する意向を示しているが、放送時期について具体的な日時は明らかにしていない。報道延期の判断は視聴者や報道関係者に衝撃を与え、米国の主要ニュース番組としての『60 Minutes』のあり方にも波紋を広げる可能性がある。

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