◎ハイチの治安は2021年7月のモイーズ大統領暗殺と8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
カナダのトルドー(Justin Trudeau)首相は16日、中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)首脳会議の中でハイチに海軍の艦艇を派遣すると発表した。
トルドー氏はバハマの首都ナッソーで記者団の取材に応じ、ハイチの殺人・レイプ・誘拐の急増が首脳会議の主要議題になったと明らかにした。
ハイチのアンリ(Ariel Henry)首相も会議に出席し、ギャングの暴力を食い止めるためには国際的な軍事介入が必要と改めて訴えた。
アンリ氏は昨年10月に国連安保理にPKO派遣を要請し、米国とカナダに部隊を率いてほしいと提案している。しかし、安保理はまだPKO派遣について議論していない。
ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
首都ポルトープランスでは半年ほど前から複数の武装ギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げており、国連はこの争いで民間人数百人が死亡または行方不明となり、数十万人が国内避難民になったと推定している。
カナダ空軍はハイチ警察の要請を受け、偵察機1機を現地に派遣。報道によると、偵察任務は16日に完了したという。
トルドー氏は記者団に対し、「ハイチは今、絶え間ないギャングの暴力、政治的混乱、腐敗に直面している」と語った。
またトルドー氏は「カナダおよびハイチの近隣諸国は秩序と安全を回復し、自由で公正な選挙を行う条件を整えるために、必要な援助を提供する必要がある」と強調した。
トルドー氏はハイチおよびドミニカ共和国の国境沿いに避難しているハイチの女性・子供を保護するための人道支援1230万カナダドル、移民への支援として1000万カナダドルを追加提供すると発表した。
ドミニカは昨年、ギャングの暴力から逃れたハイチ移民数万人を強制送還している。
トルドー氏はアンリ氏との会談で選挙の早急な実施を求めたと明らかにした。故モイーズ氏の後任は決まっておらず、先月初めに任期満了を迎えた上院議員10人の選挙も実施できていない。
国連によると、昨年ハイチで確認された殺人件数は2021年から35%増の2183件、誘拐件数は2倍以上の1359件にのぼったという。
国連ハイチ事務所は先月公表したレポートで、「ギャング関連の暴力は過去数十年間で最悪レベルに達し、数万人が攻撃に巻き込まれ、避難を余儀なくされた」としている。
カナダ、米国、その他の国々はハイチ警察に装甲車、装備、訓練などを提供しているが、ハイチの現役警察官は1万人に満たず、ポルトープランスの60%をギャングに支配されたと推定されている。